「ソフトウェアが全てを飲み込む」NRIが2023年度までのICT・メディア市場を予測

ICT・メディア市場は個々の技術やサービスの普及が進むとともに、さらにそれらを複合させた新しい用途や市場が生み出されている。また、これらの技術やサービスを活用して、企業や社会の根本的な変革が始まっている。

野村総合研究所(NRI)は、2023年度までのICT(情報通信技術)・メディア関連の主要市場について、国内・世界における動向分析と市場規模の予測を行った。デバイス/ネットワーク/コンテンツ/プラットフォーム/xTechの5分野が対象。

NRIでは、変革の本質を「アンバンドル化(既存のビジネスモデルや製品アーキテクチャの依存・結合関係の分裂)の進展」「サブスクリプションモデル前提によるビジネスプロセスの再編」の2つの本質があると指摘。これらの変化を「Software is eating the world(ソフトウェアが全てを飲み込んでいる)」の仕上げの状態にあると捉え、2023年度に向けて各市場の変化を分析した。

デバイス市場を牽引してきたスマートフォンの販売台数は、2017年度に世界全体で20億台を超える。新興国向けの低価格機種が台数ベースでみた成長を牽引するとともに、ハイエンド端末の機能向上により、デバイスの平均単価は上昇傾向にある。その結果、2023年度には、世界で23.3億台に増加すると予測する。

また、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の領域で進展している技術革新とデジタル変革の潮流の中で、ドローンや音声エージェント端末の出荷台数の高い成長が期待されるという。

ネットワーク市場では、日本国内における固定ブロードバンド回線の加入件数は、2017年度末の3,630万件から、2023年度末には3,900万件に達すると予測。2020年頃からサービス開始が見込まれる5G(第五世代移動通信システム)の普及に伴い、携帯電話端末で利用されるコンテンツがますますリッチ化するという。

携帯電話・PHSの契約回線数は、タブレット端末やIoT機器など通信モジュールが組み込まれた機器の増加、多様なMVNO(仮想移動体通信事業者)の登場などで、2017年度末の1億7,099万回線から、2023年度には1億8,316万回線に増加すると予測する。

動画配信市場は、月額固定料金で豊富な映像コンテンツを視聴できるサービスの利用の拡大により、2017年度の1,826億円から2023年度には2,200億円近くの市場になると予測。動画配信事業者が、多額の費用をかけてオリジナルコンテンツの製作・配信を強化することで、従来の放送局による一体的な提供構造から、動画配信事業者も含む制作と流通の分離・多様化構造に変化すると予想する。

プラットフォーム市場を牽引するのは、主にクラウドサービス市場とIoT市場。前者は2017年度の6,973億円から2023年度には1兆1,661億円へ、後者は2017年の9,300億円から2023年には4兆円を超える規模に成長する見込みだという。

様々な業界を変革する「xTech」市場。中でも、FinTechの重要な構成要素である電子マネーや各種カードにより支払いをキャッシュレスで行うスマートペイメントの市場は、今後も順調に成長し、その取扱高は2017年の73兆円から2023年には114兆円に達する。決済が電子化されることに伴い、その周辺にはさまざまなサービスが急速に展開されることが期待され、市場規模の大きさを見ても、xTechの中で最も注目するべき市場であるという。