世界に先駆け、高精度・高速3D気象観測はじまる

にわかに黒くなった、空に稲妻が走る。と、慌てて洗濯物を取り込むだけならまだいい。川のようになった道路で車が立ち往生することだって珍しくない今日この頃、スマホアプリで雨雲の動きを追うことが習慣になってしまった人も多いだろう。

ゲリラ豪雨や竜巻といった局所的かつ突発的な大気現象の詳細構造、あるいは前兆現象を直接観測するのに最も有効な手段は、「気象レーダ」である――。昨今、都市域においては、降雨をより細かく観測できる小型の「XバンドMPレーダ」が整備されている。それはパラボラアンテナを機械的に回転させて、地上付近の降雨分布観測を1~5分間、降水の3次元立体観測を5分以上かけて行う。

しかし局地的大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急発達し、竜巻は数分で発生し移動する。そのため、それらの兆候を迅速に察知するフェーズドアレイ気象レーダ技術が編み出され、その装置は、30秒で雨雲の3次元立体構造を観測でき、ゲリラ豪雨の早期検知手法の開発に新展開をもたらした。一方、偏波観測機能をもたないために、雨量の観測精度ではそれを有するMPレーダに軍配が上がるという。

NICTらの研究グループは、内閣府のSIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策として開発した、世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を埼玉大学に設置したことをきょう発表した。

MP-PAWRはハイブリッド型であり、MPレーダの高い観測精度をそのままに、フェーズドアレイ気象レーダ同様高速で3次元立体観測を可能にする。これにより、発達する積乱雲を観測し、20~30分先の局地的大雨や竜巻危険度を高精度に予測できるという。研究グループはTOKYO2020の効率的な競技運営、自治体での水防活動や住民への避難指示、さらに日常生活では洗濯物の取込みなどへの活用を目指すとのことだ。