国内IT市場の産業分野別/企業規模別市場規模を予測、IDC

人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の導入、デジタルビジネスや働き方改革など、企業のIT環境を取り巻く状況は常に変化し続けている。ビジネスの根幹を担うようになったITに対する産業別の国内市場規模の動向を調査会社のIDC Japanが予測した。

IT専門調査会社のIDC Japanは、国内IT市場の産業分野別/企業規模別の2017年~2021年の市場規模予測を発表した。その予測によると、2017年の国内IT市場規模(支出額ベース)は16兆5,775億円、前年比成長率は3.9%を見込んでいる。また、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は2.2%を予測している。

調査では、国内IT市場の製品分類の変更を行い、ハードウェア市場のデバイス市場とインフラストラクチャ市場への分割、インフラストラクチャ市場におけるIaaS領域の追加、加えてビジネスサービス市場の追加などを行っている。

IDC Japanによると、国内経済は円安傾向が継続していることから輸出を中心に製造業の業績が改善している。また、大都市圏を中心に「東京オリンピック/パラリンピック」開催を控えて社会インフラ投資が本格化しており、国内経済全体では活性化していることから、2017年の国内IT市場は高い成長率を見込んでいるという。

しかし、市場を牽引するのはビジネスサービスやIaaS(Infrastructure as a Service)の他、スマートフォンである一方で、サーバやストレージ、ITサービスといった分野では、金融機関などでの大型案件の完了に伴う反動などの影響もあり低い成長率に留まるとみている。

国内IT市場全体では、2020年1月の「Windows 7」のサポート終了に伴うPCの更新需要もあり、2018年、2019年はプラス成長で堅調に推移すると予測しているが、2020年はその反動によってマイナス0.8%の低い成長率となるとみている。

産業分野別に見ると、多くの産業分野において2017年はプラス成長を見込んでいるが、特に製造業では、円安傾向の長期化に加えて、米国経済が好調なことから輸出が堅調であり、多くの企業で業績が改善しており、生産管理システムなどの既存システム刷新、情報系システム構築など積極的なIT支出が行われている。

また、公共/公益では、電力およびガスの小売自由化に伴う顧客管理、販売管理システム刷新やスマートメーター導入に向けての新規投資が積極的に行われており、運輸/運輸サービスでは人材不足に対応するITへの投資などで堅調な投資が継続している。

国内のユーザー企業のIT支出において、これまでのオンプレミス、作り込みアプリケーションでの導入から、クラウドの活用、パッケージソフトウェアの採用が主流となっている。こうした傾向が国内IT市場の動向にも顕著に反映されつつあるという。

IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村 仁氏は「ユーザー企業の支出動向の変化が顕著になっている中で、ITサプライヤーはITの枠を超えてユーザー企業のニーズに適したソリューションの提案を行うことが求められる」とコメントしている。