島津製作所は、プラスチックや樹脂複合材料の引張試験を最速20m/秒(時速72km)で行える高速衝撃試験機「HITS-TX」を販売開始した。物性と挙動の多面的な評価により、繊維強化プラスチックのような新素材の研究開発などへの貢献が期待できる。
HITS-TXは、最速20m/秒から最遅0.0001m/秒、最大試験力10kN、最大変位は300mm。プラスチックや樹脂系複合材料、金属などの様々な試験片に対して1台で幅広い引張試験に対応する高速衝撃試験機。また、新開発した同社独自の助走治具を使用した場合、設定した引張速度で再現性に優れた試験が可能。
従来、試験速度を早めるほどデータにノイズが乗りやすく安定した波形を得るのが難しかった。HITS-TXではデータ処理方式を一新したことで、一般的な速度で実施した引張試験のようなノイズの少ないデータを取得でき、シミュレーションや評価にデータを利用しやすくした。最高1,000万コマ/秒で撮影可能なビデオカメラ「Hyper Vision HPV-X2」を連動させることで、超高速な破壊挙動の可視化やDIC(Digital Image Correlation:デジタル画像相関法)解析によるひずみ測定ができる。
近年、自動車業界を中心に、様々な部品を加工性に優れる軽量な樹脂系素材や高機能な樹脂複合材料に置き換える動きが拡大。衝撃特性や強度に関するデータを安全性のシミュレーションに利用するため、高速な引張試験が注目されている。
島津製作所では、プラスチックや樹脂系複合材料の研究開発がさらに進展して高速引張試験の重要性が国内外で高まることを見越し、ノイズが少なく評価に利用しやすいデータが得られるHITS-TXを開発した。
HITS-TXの販売価格は、2,900万円(ソフトウェア込み、税別)。島津製作所は、自動車メーカーや素材メーカー、受託試験企業などに展開し、発売から3年間で50台の販売を目指す。