高画質カメラ映像を無線ですばやくバケツリレー

事件や事故、災害が起こるとニュース番組などで現場の映像が流される。それをみて、路上に紙くずや空き缶などを捨てる連中や、ふつうゴミの収集前夜にこっそり粗大ゴミを置きに来る輩を撮影したくなる今日この頃――

防犯や防災などを目的に、建物や施設、市街地など様々な場所において監視カメラの普及が進んでいる。監視カメラシステムの構築にあたっては、映像通信のための配線敷設に大きな手間がかかっていた。一度敷設すると、設置場所を頻繁に変えるなどへの対応が容易ではなかったという。東芝は、複数の無線カメラからのフルHD(1920×1080ピクセル)映像を、バケツリレー方式で遅滞なく伝送できる「無線マルチホップ映像伝送技術」を開発した。

変化の激しい無線通信を複数回行う無線マルチホップ映像伝送においては、通信回線の品質が大きく揺らぐため、高精細な映像を遅延なく送信することも課題となる。これに対して、同社は次の3技術を新たに開発。

1.各無線機が自律的にネットワーク環境を観測し、安定した通信路を生成・維持する経路制御方式
2.ネットワーク環境の確認処理の高速化手法
3.複数の経路を同時に利用する映像伝送方式

これらの技術により、5台の無線カメラを5ホップにつなぎ、フルHD映像(毎秒30フレーム)5本の1秒以内での伝送を実現した。また、これらをドローンに適用し、複数ドローンを用いた海上監視実験システムの実証実験にも成功したという。

「無線マルチホップ映像伝送技術」により、監視カメラの設置環境に応じて無線ネットワークを自律的に構成することができるため、監視カメラを自由に配置・移動することや、複数ドローンカメラをつないだ広域な映像監視システムの構築が可能になるとのこと。そして東芝は、同技術を活用した監視カメラシステムの実用化を目指し、カメラ台数の拡大、移動体搭載カメラを用いた伝送の安定性検証を進めていく構えだ。