高分子デバイスによる手術トレーニングに向けて

物事をありありと想像する力はすべての職業人を優秀にする。医師ならそれは不可欠だろう。外科医ならそれに加えて、手先の器用さと、高い練度の技が必要とされる。昨今、想像力はコンピュータなどが補ってくれるとはいえ――。

医療現場では手術の高度化に伴う安全性の確保の重要性が増していて、特に若手医師の技能向上に向けて、ヒトの臓器などの触感や動きをより正確に再現した手術訓練シミュレータが求められているという。豊田合成は、医療機器開発を行う早稲田大学発のベンチャー企業であるイービーエムとの間で、「e-Rubber」を用いた手術訓練シミュレータの開発・普及に関する協働活動契約を締結した。

豊田合成は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」委託業務の成果を活用して、電気エネルギーを運動エネルギーに直接変換する、高分子誘電アクチュエータや誘電センサになるe-Rubberの開発を進めている。一方、イービーエムは、心臓外科領域を中心に機器開発および訓練システムの構築を手がけていて、冠動脈バイパス手術訓練シミュレータ「BEAT」「YOUCAN」は国内の心臓血管外科施設の約7割で導入。米国、欧州、アジア諸国への販売実績も有し、自社の手術トレーニングセンター「FIST」(福島県福島市)を中心に、手術実技トレーニングの国際標準化を目標にハード・ソフト両面から、医師たちとの緊密な連携のもとシミュレータの開発を進めているという。

そして今回、両社の技術・ノウハウ・知見を組合せて、よりリアルなシミュレータを実現する――連携を決定した豊田合成は、今後、e-Rubberの多様な用途の可能性を医療分野で活かすべく、製品開発やマーケティングなどあらゆる領域でイービーエムと協調して活動し、医療技術の進化に貢献していく構えだ。