タイ王国の首都バンコクの正式名称は「天使の都」。その中心地を流れるチャオプラヤー川を北へ遡っていくと、国内有数の稲作地帯、そしてアユタヤ王朝の遺跡群が見られる。隣の行政区、川の東岸に広がるサラブリー県では、生物由来のジェット燃料開発が始まった。
地球環境に優しいグリーンテクノロジーのなかでも、石油などの化石燃料に代わるバイオ燃料は、次世代エネルギー資源の注目株だ。特に植物を利用するバイオマスは、その生育期から二酸化炭素を吸収し続ける理屈から言っても、地球温暖化の有力な対策になると考えられる。
そしてきょう、IHIは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」において、サイアム・セメント・グループ(本社:バンコク)およびSCG Cement-Building Materials社の協力のもと、サラブリー県でパイロットスケール試験設備の整備を始めると発表した。
バイオジェット燃料製造の商用化を目指し、バイオジェット燃料生産において複数ある技術の1つとして、微細藻類由来のバイオジェット燃料を一貫製造するプロセスに関する技術開発に、神戸大学と共に取り組むという。
IHIは、すでにNEDO委託の「戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業」で要素技術の開発を行い、バイオ燃料用微細藻類の安定培養に成功している。ほかに、炭化水素油を50%以上含有する高速増殖型ボツリオコッカス株を用いて研究開発を実施。'15年度には屋外大規模培養(1,500㎡)を結実させている。
今回、タイでは規模をいっそう拡大し、10,000㎡の培養池を含むプラントを設置し、パイロットスケール試験を実施する。より高効率な工業化に向けた課題抽出と対策検討をし、安定的な長期連続運転や製造コスト低減などの実現性を検証する構えだ。