生産年齢人口の減少に直面している日本ではいま、政府主導で働き方改革が叫ばれている。企業における課題は、ただ生産性や作業効率を上げるだけでなく、ベテラン従業員の知識やノウハウを伝承していく仕組み作りにもある。
そのために最先端ICT(情報通信技術)を駆使し、これまでの産業用ロボットに加えて人工知能(AI)を活用する動きが産業界全体に広がりはじめている。そしてきょう、JFEスチールは、製鉄設備のメンテナンス業務向けに開発してきたAI技術――その試験導入効果を受け、全社導入を決定したと発表。設備メンテナンス業務へのAI適用は、国内業界では初の取り組みだとした。
製鉄所では、稼働設備の状態監視や計画的な設備停止での点検を行っている。ここで万一故障が発生した場合、生産への影響を最小限にするために迅速な修理が求められる。同社においては従来、その故障の現象や症状から不具合を起こしている箇所や原因を特定するため、多くのマニュアルを参照するほか、ベテランを中心とした社員の経験に基づいた設備知識や判断能力により対応してきたという。
JFEスチールは、ベテラン技能を次世代に着実に伝承し、故障復旧時間の短縮を極限まで追求するため、最新のIT技術を取り入れていくことが最良であると判断し、故障復旧についてAI技術を開発。これを来年度に全社展開することにした今回、導入を進めるAI技術では、これまで長きにわたり蓄積してきた多くの作業マニュアルに加え、過去のベテラン作業者の作業実績や判断などを記録した同社独自のデータベースとAI技術とを組み合わせることで、経験の浅い担当者でも、今起こっている異常現象に対して有用な情報を迅速に引き出すことが可能になる。
AI等の先端技術の活用は必要不可欠だとする同社は、10月に「データサイエンスプロジェクト部」を新設していて、さらなる新技術の開発と実用化を進めていく構えだ。