べん毛モーターの回転機構の解明への第一歩、大阪大学が成功

大阪大学は、細菌べん毛モーターのエネルギー変換装置である「固定子複合体」がナトリウムイオンを感知して活性化し、モーターに組み込まれる仕組みを世界で初めて明らかにしたと発表した。ナトリウムイオンセンサーなどの開発に期待できるという。

大阪大学大学院生命機能研究科の寺原直矢特任助教、南野徹准教授、難波啓一特任教授、金沢大学理工研究域バイオAFM先端研究センターの古寺哲幸准教授、安藤敏夫特任教授、名古屋大学大学院理学研究科の内橋貴之教授の共同研究グループが成功。研究成果は、米国科学誌「Science Advances」に公開された。

バクテリアはべん毛と呼ばれる回転分子モーターを使って最適な環境へ移動する。べん毛モーターは、環境変化を感知するバイオセンサーとしても機能する。そのため、べん毛モーターが環境変化を感知するとバクテリアの細胞分化が誘導されたり、バイオフィルムと呼ばれる細菌社会が形成される。

これまでに、べん毛モーターが回転する仕組みについては詳細に解析されていたが、バイオセンサーとして働く仕組みは解明されていなかった。最近、べん毛モーターの固定子複合体が外環境変化を感知し、回転子リング複合体の周りに配置される固定子の数を自律的に制御することが分かってきた。しかし、膜タンパク質である固定子複合体はその取り扱いが大変困難であり、詳細な仕組みは不明のままだった。

今回、共同研究グループは、固定子複合体を単離精製することに成功し、高時間高空間分解能で生体分子の観察が可能な高速原子間力顕微鏡を用いて、世界で初めて固定子複合体1分子の振る舞いをリアルタイムで可視化することに成功した。モーターを回転させるために必要なエネルギー源であるナトリウムイオンが結合すると固定子の一部が規則正しく折りたたまれ、その結果モーターに組み込まれることを明らかにした。

この研究成果は、高効率で回転するモーターの回転機構の解明への第一歩とともに、生体内のナトリウムイオン正確に測定できるバイオセンサープローブへの応用や、ナトリウムイオンによって生体分子の機能を制御できるナノデバイスへの応用が期待される。