20XX年宇宙の旅を現実に

キューブリックが描いたあの年はもうとっくに過ぎている。よりエンタメ色の強い「スタートレック」、そして日本で人気の「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」の舞台となる時代はずっと先のことだが、現実にはまだ火星にさえ誰も行けないと思っていたら――。

きょう、九州大学大学院総合理工学研究院の森田太智助教と山本直嗣教授は、大阪大学レーザー科学研究所、パデュー大学、光産業創成大学院大学、広島大学、明石高専と協力して、プラズマロケット磁気ノズルのレーザー生成プラズマ噴出方向の制御に成功したことを発表。

有人火星探査が現実味を帯びる中、従来の化学ロケットでは火星までの往復に長時間を要し、宇宙船乗務員・乗客には心理的な負担に加えて宇宙線被曝、骨密度減少など大きな負荷をかける。化学ロケットに代わる高速の宇宙船・ロケットが求められていて、将来の惑星間・恒星間航行の有力候補とされるレーザー核融合ロケットは、高速で膨張する核融合プラズマを強力な磁場で制御し排出するという。

「補助エンジンなしで方向制御が簡易に行える、画期的な手法だ」と研究者が語る。今回、大阪大学レーザー科学研究所のEUVデータベースレーザーを固体に照射することで高速に膨張するプラズマを生成し、複数の電磁石を組み合わせた磁気ノズルで排出プラズマの方向制御ができることをはじめて実証。生成プラズマとその膨張過程を数値シミュレーションで計算することで、同手法の原理が実証可能だと確認した。

成果は英科学誌「Scientific Reports」に掲載され、実用への道を歩んでいる。今月、さらに100倍のエネルギーをもつレーザー「激光XII号」を利用し、性能アップに向けた詳細な実験を行い、同手法の実用化を確信するデータを得た。研究グループは今後、実機で想定される、さらに1000倍のエネルギーを用いたプラズマロケット磁気ノズルの原理実証を目指していく構えだ。