スマート農業の市場規模は104億2,000万円、矢野経済研究所調べ

矢野経済研究所は、国内におけるスマート農業について調査を実施し、その結果を公表した。農業データ連携基盤が2017年度に始動し、スマート農業に関するデータ共有化が進展すると予測している。

今回の調査におけるスマート農業とは、従来からの農業技術と情報通信技術を連携させることで生産の効率化や農作物の高付加価値化を目指すものを指す。農業の生産から販売まで情報通信技術を活用した、高い農業生産性やコスト削減、食や労働の安全などを実現するものと定義している。

農業市場規模は、①栽培支援ソリューション(農業クラウド、複合環境制御装置、畜産向け生産支援ソリューション)、②販売支援ソリューション、③経営支援ソリューション、④精密農業(GPSガイダンスシステム、自動操舵装置、車両型ロボットシステム)、⑤農業用ロボットを対象として事業者売上高ベースで算出した。国内市場を対象とし、市場規模には農業向けPOSシステム、農機などのハードウェア、農業用ドローンなどは含まれていない。

2016年度のスマート農業の国内市場規模は、前年度比107.2%の104億2,000万円であり、2017年度が120億5,000万円(前年度比115.6%)、2023年度には、2016年度比で約3倍となる333億3,900万円まで拡大すると予測する。

スマート農業国内市場は、2017年度頃までは農業クラウド・複合環境制御装置・畜産向け生産支援ソリューションなどの栽培支援ソリューションが牽引し、2018年度以降は販売支援ソリューションや気象予測と連携した経営支援ソリューションが拡大する見通し。また、2018年度から農機の無人運転を実現するシステム(精密農業)が登場すると見られ、精密農業が拡大すると予測する。

一方、スマート農業が普及するためには、農業機械における情報通信プロトコルの共通化と標準化が重要。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)として開発が進められ、様々なデータを共有・活用できる「農業データ連携基盤」が2017年度から立ち上り、スマート農業に関するあらゆるデータの共有化が進展している。

また、2018年度には準天頂衛星システムが4機体制になることから、高精度の測位情報が入手可能になる。測位情報は、他の衛星の画像や気象、地形、地質などの多様なデータと組み合わせることで用途が広がる。農業は、栽培品目・地域性によって、状況が大きく異なるため、それぞれの企業が持っている技術・強みを活かした連携が必要になる。

今後、スマート農業参入事業者、農業資材メーカー(種苗会社、農薬メーカー、肥料メーカーなど、農業とは関連がない異業種企業が連携することが必要になるとみている。その結果として、国内農業が現在抱えている課題を解決し、今後急速に拡大する世界の食市場を日本版スマート農業の力で取込むことができると矢野経済研究所では考察している。