三井物産は、乗用車・商用車の世界的メーカーであるDaimler AG(以下、Daimler)と共に、欧州においてEV充電システムを提供し、EV用電池を利用した電力事業を展開するThe Mobility House AG(以下、TMH)に出資参画したことを発表した。
自動車業界では、世界的な環境規制の強化を背景として、多くの自動車メーカーがEVシフトを鮮明にしており、今後、本格的なEVの普及が期待されている。一方、先進国を中心とする電力業界では、不安定な電源である太陽光・風力発電の急増により送配電系統への負荷が増加しており、EVの普及による電力需要の増大はその負担をより大きくすることが懸念される。そのため、蓄電システムの導入などの系統安定化ソリューションや、電力需給バランスの状況に合わせたEV充電タイミングの自動調整が求められている。
こうした課題に対し、TMHはDaimlerを含むEVメーカーと提携し、法人や個人顧客に向けて、最適なEVスマート充電ソリューションを提供している。また、Daimlerとの共同事業として、EV用電池を組み上げた合計出力30MWの蓄電システムをドイツに建設し、系統運用者向けに蓄電サービスを提供している。また、TMHは、駐車中のEVを蓄電リソースとして送電系統とシェアし、EV所有者が系統安定化サービスによる電力収入を獲得する技術「Vehicle to Grid(V2G)」の事業化も進めている。
三井物産は、2017年5月に発表した中期経営計画において、モビリティを4つの成長分野の1つとして定め、自動車素材から移動・輸送サービスにいたるまでの自動車バリューチェーンの拡充を推進している。三井物産はTMHへの出資参画を通じて、同社の成長を支援するとともに、三井物産が自動車・電力インフラ・エネルギー事業で培ってきた総合力を発揮することで、再生可能エネルギーとEV導入が加速している欧州の先進的ビジネスモデルの事業化に取り組み、米国や日本など他地域における事業拡大を目指す。