日本は周囲に膨大な水があるのに、水不足に見舞われることが度々だ。塩分を含んだそれは飲めないし、風呂でも洗車場でも、あるいは田畑でも使えないために――。乾いた土地柄の国では、なおさら海水を利用したくなるはずだ。
ほぼ全土がペルシャ湾に面するカタールでは、北部ラスラファン工業都市において、海水を各プラントの冷却用水として活用し、その後最高45℃程度で共通放水路から海に放出しているという。NEDOは、カタール電力・水公社と共同で高温排海水を淡水化する、実証事業の実施に合意し、昨日、日・カタール合同経済委員会にて基本協定書を締結した。
省エネ・低環境負荷型の造水システムの適用性を実証。ラスラファン工業都市から排出される高温の設備冷却海水を原水として利用し、独自の低コスト型の逆浸透膜法(RO膜法)により淡水化する。
ペルシャ湾岸の海水は濁質・有機物の濃度が高いため、RO膜の目詰まり防止のため前処理段階で海水に薬液を注入してそれらを事前に排除する。一般的な手法では、この薬液注入や排水処理に起因するプロセスの複雑化や造水コストの増大が課題であった。
また、従来のRO膜法では長期安定してろ過可能な海水温度の上限が35℃程度であった。
が、日本企業製のRO膜を用いた上記前処理の現地テストにおいて、40℃を超える海水に対しても良好な脱塩性能が維持されることを確認。新開発の「無薬注砂ろ過」方法の導入により、薬液注入を不要とし、設備の簡素化とともにRO膜の安定的な稼働が可能なレベルに海水を処理する。これらの効果によって、当該地域で主流である蒸発法との比較において80%以上の省エネ化、40%以上の造水コスト削減を目指すという。
共同事業では、今後、実証設備の建設と運転を行い、商用化に必要なデータの取得および周辺国への普及展開を含めたビジネスモデルについて検討を進めるとのことだ。