未来の農業、スマートに始動

人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)など、情報通信技術(ICT)を活用して業務を効率化したり、品質を上げたり、生産性を向上させたりする取り組みは、金融や物流サービス、製造現場で先行している。

この国では、昨年の閣議決定「日本再興戦略2016」において、AIやIoT、ビッグデータ、ロボットを活用した第4次産業革命を推進するとして、既に他産業で活用が進んでいるこれら最新技術を農業分野にも活用することにより、生産性の飛躍的な向上等を実現し、農業の成長産業化に結びつけていくことが必要だとされ、農林水産省にて「人工知能未来農業創造プロジェクト」が旗揚げされた。

そして今春、同プロジェクトにおける研究課題「AIを活用した栽培・労務管理の最適化技術の開発」が採択された。愛媛大学、PLANT DATA、PwCあらた、凸版印刷、協和、浅井農園、福井和郷の7法人コンソーシアムはきょう、それにマスコットネーム「ai tomato(あいとまと)」を冠して、今月中旬より本格的にスタートすると発表した。

「植物生育を正確に把握する技術」と「作業者の見える化技術」を組み合わせて、平成33年度までに雇用労働時間の10%以上削減。AI技術と連携した栽培・労務管理モデルの開発・実証を進め、同年度までにAIを活用した高精度栽培・労務管理システムのサービス化も目指す。

「ai tomato」では、7法人それぞれが強みとする技術、ノウハウ、知見を持ち寄り、太陽光植物工場において重要な3つのデータ群「植物生体情報」、「環境情報」、「栽培管理・労務情報」について新たな計測技術を開発するとともに、そのデータを用いたAIによる解析モデルを開発する。

「植物生体情報」の計測は、愛媛大学植物工場研究センターが開発したIoT・センシング・ロボット技術を活用。これにより、日単位の成育状態、光合成量、色づき計測など、経験や主観によらない生育状態を多元的に把握する。そのデータに基づき、栽培管理に必要な作業量を正確に予測し、労務に合わせた生育の制御と作業の効率化を図る。

さらなる作業の効率化に向け、Bluetooth技術とネットワークカメラを用いた高精度労務管理システムを活用。作業者の位置情報と映像を一元管理することにより、詳細な作業の見える化を図り、作業の単純化・平準化・最適配置を実現する。目的達成の中心となるのがAI技術。植物生育を含めた大量のデータを解析し、人間を超えるレベルで効率良く目的を達成するための最適シナリオを実証するとのことだ。

――研究成果は、未来の農業を実現するだけでなく、不毛地帯での栽培や、安定的な食糧確保にもつながるため、世界に羽ばたく可能性がある。
と筆者は思う。