医療、防災などにおける広域IoTデータ収集・制御を可能に

災害発生時に設けられる対策本部および避難所では、広いエリアでの情報収集がとても重要になる。へき地や離島などでの医療と福祉においても、映像を含む情報の伝達は貴重である。ゆえにあらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を用いたしくみの研究が進んでいる。

現在、実フィールド環境では、6km程度で1段の中継を行う2地点同時映像伝送の基礎実験にとどまり、多段中継機能の実証は不十分――。IoT用システムへの応用も行われていなかったという。京都大学と日立国際電気の研究グループは、比叡山および琵琶湖畔などと京都を結ぶ京滋地域において、IoTデータ収集・制御用広域系Wi-RANシステム用無線機による多段中継伝送を用い、3段・分岐有の構成で総中継距離75.0km、単区間最大距離27.8kmでの5拠点同時中継データ伝送試験に成功した。

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)主導の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)、「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」研究開発の一環として行われたという。今回の実証実験では、上記Wi-RAN同時中継回線を用いて、Wi-SUN無線機を用いたネットワークにより血圧・脈拍等の生体計測データを取得する医療データ収集システムと、災害時における被災現場の情報収集としての防災・減災危機管理システムとの異システム同時運用試験にも成功したとのこと。

より長距離の多段中継回線を容易に構築するために、無線機の電源投入のみで、自動的に通信可能な無線機をセンシングし接続していくことにより、順次中継エリアを拡大していく、詳細設定不要な自動多段中継ネットワーク構築機能を開発。さらに実際に想定されるアプリケーションで十分に利用できることを確認した。試験結果を受け、実システムにおけるWi-RANマルチホップを利用したIoTシステムの普及促進が期待される。