全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)によると、「世界のCO2排出量」はおよそ330億トン。グローバルで環境規制が厳しくなっている。これに対して、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、自動車の軽量化――化石燃料の消費を抑えることができるしくみを目指した研究開発が世界で進行しているといい、自らも「革新的新構造材料等研究開発」事業を進めている。
今日、NEDOと新構造材料技術研究組合(ISMA)の組合員である名古屋大学ナショナルコンポジットセンター(NCC)は、熱可塑性樹脂と炭素繊維を混練するLFT-D工法を用いることで、熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のみによる自動車用シャシーの製作に世界で初めて成功。これにより、材料供給から最終製品までの一貫自動生産が可能になり、部材コストの低減にめどを立てることができたと発表した。
軽量化において有望視されているCFRPでは従来、熱硬化性CFRPが利用されていた。が、それは力学的特性に優れるものの成形性・融着性に課題があり、航空機や一部の高級車への適用に留まっていた。 課題の解決に向けて、上記NEDO事業において、名古屋大学の石川隆司 特任教授らのチームは、成形性・融着性に優れる熱可塑性CFRPに着目し、かつLFT-D(Long Fiber Thermoplastics-Direct)工法を用いた開発に取り組んできた(参考資料、2015年精密工学会誌)。結果、自動車のシャシー部材の成形をこれまでより圧倒的に速く、1分程度で完了させ、超音波融着法を用いたシャシー組み立て技術によって、熱可塑性CFRPのみによる自動車用シャシーを実現した。
連続的に炭素繊維を供給して熱可塑性樹脂ペレットと混練し、比較的長い炭素繊維長を保って混練機から押し出される素材を高圧プレスに供給、短時間に所望の構造部材を成形する、LFT-D工法(ドイツ・フラウンホーファ研究機構発の繊維強化プラスチック製造法)による――今回の方法では、機体等の部材成形で用いるオートクレーブ(圧力釜)法で必須の中間工程を不要とし、熱可塑性樹脂と炭素繊維の供給から最終製品までの一貫自動生産システム構築が可能となり、短時間成形が行える。
熱可塑性CFRPの融着可能な利点を生かしてシャシー部材を接合することで、オール熱可塑性CFRP製シャシーを具現化した。今回、ロボットを活用した超音波融着システムを構築したことで、複雑な実構造体の高速接合が可能になったという。成果物は、今月24日から幕張メッセで開催の「IPF Japan 2017 国際プラスチックフェア」にて披露される。