EVも軽量化、燃費向上へ

化石燃料エンジンと電気モータ併用のハイブリッド車の登場によって、クルマの燃費競争はその構図が大きく変わった。

いまでは家でも充電できるPHVが人気を集め、エンジン車開発で日米独の後塵を拝する国々では、国策だろう、「内燃機関禁止」とか「EVのみ許す」という方針を打ち出している。

その電気をつくる過程を無視すればたしかにエコである。EVの航続距離は現在およそ400km。東京大手町を出発して、東名高速道路を順調に進んだとしても京都のかなり手前、山々に囲まれた古戦場関ヶ原にようやく届く程度だ。電池やモータの性能が上がればさらに――と期待されるが、動力性能の向上と同時に進めねばならず、いますぐに実現できそうなのは車体の軽量化だ。

スレンダーな女性が駆るEVは関ヶ原で充電して京都の紅葉へと、足を延ばせるだろうけれど、関取が運転するEVは濃尾平野で長良川の鵜飼いを眺めることになるかもしれない。たとえ話はさておき――

世界的な環境規制強化に伴い、車両内のエンジン、トランスミッション(変速機)などの装置から構成されるパワートレインシステムは一層の効率化が求められている。より高度な電子制御を実現するため、パワートレインシステムに搭載されるECU(Electronic Control Unit)やセンサ、アクチュエータ、それらを接続するワイヤハーネスは増加し続け、システムの複雑化が進んでいる。一方、パワートレインシステムの構成装置ごとに分散しているECUを一つに集約し、システムレベルで効率化を図る方法が検討されている。

が、ECUを統合すると、一つのECUとワイヤハーネスで接続されるセンサおよびアクチュエータの数が増加し、両者の平均距離が遠くなるため、ワイヤハーネスの総延長が増加し、重量増によって燃費が悪化する。加えて、通常ECU内に設置するアクチュエータ駆動用のMOSFET(金属酸化物半導体 電界効果トランジスタ)が一カ所に集中するため、発熱量が増加し車載部品として必要な自然冷却ができなくなる懸念も発生するという。

日立製作所と日立オートモティブシステムズは、パワートレインシステム内のECUと、複数のセンサやアクチュエータを個々につないでいるワイヤハーネスを集約して共有化し、ネットワーク接続を可能にする、車載用の大容量直流PLC(電力線通信)技術を新たに開発したと発表。「ネットワークの自動コンフィギュレーション技術」と「安定した通信を可能にするノイズ回避技術」で構成されている、今回開発の技術により、従来比でワイヤハーネス重量を約40%削減、パワートレイン統合ECUの発熱を約60%削減することも可能となる。

電動化車両にも応用でき、自動車の軽量化を実現し、燃費向上に貢献するという。同技術は、13日までグランキューブ大阪(大阪国際会議場)で開催の自動車技術会秋季大会にて発表予定とのことだ。