メンテナンスフリーのICタグで漏水検知

漏水は怖い。もうずいぶん昔の話だが、とある企業でコンピュータシステムを一斉に停止し、その日の基幹業務を断念したことがあった。原因は、天井から落ちてくる水滴――上の階にある社員食堂で水道管が破裂したのだった。

古い建物を解体する際、様々な箇所に雨漏りの跡を発見することがある。入居中幸いにも大事にならなかっただけで、本質的には危険なものである。漏水は建築材料や設備機器の劣化などの要因となり、早期に発見し修繕することが重要である。

だが従来、漏水検知システムは建物内に漏水検知帯を張り巡らせねばならず、電源や配線工事が必要であった。ワイヤレス型にすれば漏水検知センサーのサイズ自体が大きく、個別の電源や一部配線工事を要するため高コストにつながるなど、課題があったという。セイコーインスツル(SII)の半導体製造・販売子会社であるエスアイアイ・セミコンダクタと、大成建設は、「CLEAN-Boost技術」による電池レス無線機能付きタグ(ICタグ)を用いた、電源や配線工事が不要な漏水検知システム「T-iAlert® WD」を共同で開発した。

大成建設が計測・予測・評価に基づく安全安心の確保や災害防止などを実現するツールとして開発を進めている自動警報技術T-iAlert®に水検知(Water Detection)を加え、立命館大学とともにその中核技術を生んだエスアイアイ・セミコンダクタによる、微少なエネルギーを蓄電、昇圧して利用する回路技術CLEAN-Boostを搭載した。

システムは、「シンプルな仕組みで漏水検知が可能」、「漏水位置を正確に特定し、情報を共有」、「低コストで検知が可能」、「リニューアルへの対応が可能」といった特徴を備えていて、メンテナンスフリーを実現する。建物内の漏水検知を効果的に行えるセンサーの設置方法などの検討が進められ、来年中の実用化と、土木構造物などへの展開も計画されている。