IoTで消防士の熱中症を防ぐ

近ごろこの国の夏は暑い。部屋の中でも熱中症のリスクがいわれ、空調のない屋外での作業やスポーツは危険だとされる。だのに消防隊員は、防護服を身に纏い、火災現場に駆けつけ消火活動に当たらなければならない。そのとリスクはいかほどのものか――。

難燃性などに優れた防護衣料を重ね着するため、熱が体内の深部にまで蓄積される。隊員は実際、熱中症を引き起こすことがあり、特に夏場の暑熱環境での対策が課題だという。帝人は、「消防機能向上への取り組み」の一環として、ウェアラブルデバイスを内蔵した「スマート消防服」を開発。これを用いた消防隊員の安全警報システムの開発に向けて、共同研究先の大阪市立大学が大阪市消防局とともに行った実証実験データを分析した結果、深部体温の予測による熱中症リスクの予知に世界で初めて成功した。

活動量や体格などに差異があり、ウェアラブルデバイスによる心拍数や体温の計測だけでは、熱中症リスクの予知は困難だった。従来の課題を解決した帝人の「スマート消防服」は、長期耐熱性や難燃性に優れるメタ系アラミド繊維「コーネックス」、高強度のパラ系アラミド繊維「テクノーラ」などが使用され、IT(情報技術)企業インフォコムと共同開発したセンシングデバイスが内蔵。名刺ケースサイズの同デバイスは、その筐体に難燃性や耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂「パンライト」が用いられていて、使用温度や位置情報等の通信ができ、火災現場や消防本部の管理システムに隊員のデータをリアルタイムで送信する仕組みを有している。

センシングデバイスからの送信データは収集・解析され、深部体温の予測による熱中症リスク警報の発信など、消防隊員の安全管理に活用される。IoT(モノのインターネット)活用事例とも言える、安全警報システムは、来週東京ビッグサイトで開催の「危機管理産業展2017」にて披露される。