第4次産業革命にて熟練工の技を再現

現在の情報社会から、近未来の超スマート社会へと遷る。「Society5.0」の看板を掲げた舞台に、人工知能(AI)や、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」があがり、人間の行動様式や知識などをデジタル化した仕掛けで魂が吹き込まれる。

第4次産業革命は、ドイツと米国が先導し日本が追う構図と言われる。が、それはコンセプト作りとか実行の速さ、世界へのアピール力の話であり、新たな産業基盤を形成するテクノロジー企業群の厚み、集積度や競争力は、ドイツよりも日本のほうが優れているという見方もある。世界市場を相手にする電子部品、機械・設備、IT(情報技術)ベンダーを数えれば、たしかに日本に分があるし、部品製造や自動車産業において日本企業は、米国企業にさえ脱帽される。

利己よりも協調が尊ばれる文化もきっと功を奏する。サイバー空間とフィジカル空間の高度な融合を目指す「Society5.0」を謳う、日本において、経済産業省は、「Connected Industries」というコンセプトを推進している。あらゆる産業分野で、ヒト、モノ、システム、企業、行動や思考・嗜好など、さまざまなつながりによる新たな付加価値の創出し、新たなビジネスモデルを誕生させようという。

今日、JSRとNTT、アクセンチュアは、上記Connected Industriesの実現に向けて、コンビナートに拠点を構える企業が相互連携して生産性・安全性向上を図る次世代型「スマートコンビナート」の実証プロジェクトを、JSR千葉工場で開始したことを発表。このプロジェクトでは、暗黙知とされてきた熟練技能者の優れた技術やノウハウを、デジタル技術を活用して継続的に形式知化し、活用する体制を構築・検証するとした。

熟練技能者が化学製品の生産プロセスで⾏っているプラント運転管理や保全業務に関して、映像や音声などの非構造データをセンサと無線で自動収集し、分散制御システム(DCS)など機械設備からのデータと組み合わせて分析できる基盤を構築――。機械学習アルゴリズムに基づいた適切な判断をリアルタイムにオペレーターに提示できるソリューションも開発し、次世代型「スマートコンビナート」に求められる機能や基盤の実証を⾏う。

3社は、JSRの運転管理・保全業務に関する知⾒、NTTアドバンステクノロジなどNTTグループが有するAI技術「corevo®」等の先進技術、アクセンチュアのアナリティクスおよびインダストリアル・インターネット・オブ・シングス(IIoT)領域におけるノウハウや国内外で有する化学業界の業務実績など、各社の強みを融合させて、様々な企業や⾏政などが相互連携して推進すべき「オープンイノベーション」思考のもと、実証を進める構えだ。