東北大学、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規治療法を報告

東北大学は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する新規治療として、バルーン肺動脈形成術は効果的で安全な治療法であることを報告した。これまでの治療法が適用できない患者に対する新しい治療法であり、治療後の長期予後も改善できるという。

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川 宏明教授、杉村 宏一郎講師、青木 竜男院内講師らの研究グループが発表。研究成果は、欧州心臓学会の学会誌「European Heart Journal誌」電子版に掲載された。

国の指定難病である「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」(CTEPH)は、体を動かすときに息苦しく感じる、すぐに疲れるといった症状が現れる疾患。何らかの原因で肺の動脈に血栓が生じて血管が狭くなったり、詰まることで肺動脈圧が異常に上がり、病状が進行すると心機能に影響が出てくる難治性の疾患だ。日本国内での患者数は2,140人(2013年度)と報告されている。

その主な治療法は、肺動脈血栓を外科的に取り除く肺動脈血栓内膜摘除術だが、大きな血管にしか適用できず、約40%の患者は末梢の細い血管に病変が限局した末梢型CTEPHや、合併症のために手術ができない非手術適応のCTEPHだという。非手術適応のCTEPHの治療には、これまで薬物療法が行われてきたが治療後の経過が悪いことが問題となっていた。また近年、従来の手術が適応できない末梢型CTEPHに対し、肺動脈バルーン形成術が行われており、肺動脈圧や運動能に対する短期的な改善効果が報告されていた。

今回、研究グループは肺動脈バルーン形成術の短期的な効果だけでなく、より長期(慢性期)の血行動態と治療後の経過について詳細に検討し、この治療法がCTEPHに対して非常に効果的かつ高い安全性を示すことを報告した。CTEPH患者において、Dual energy CTを用いた肺動脈バルーン形成術は安全に施行でき、肺動脈圧と運動能を改善して治療後の長期予後も改善することを示したという。