洗濯可能な超薄型有機太陽電池を開発

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター(CEMS)創発ソフトシステム研究チームの福田憲二郎研究員、染谷隆夫チームリーダーらの共同研究グループは、洗濯も可能な伸縮性と耐水性を持つ超薄型有機太陽電池の開発に成功した。

身に付けることができるウェラブルセンサーは、生体情報の継続的なモニタリングを可能にする。例えば、血圧や体温、心拍数、心電波形などを継続的に測定できれば、風邪や脳梗塞、心筋梗塞などの早期発見につながると考えられる。

そのようなウェアラブルセンサーでは、衣服に貼り付け可能な環境エネルギー電源である太陽電池の開発が重要となる。研究グループによると、衣服上へ電源を貼り付けることで十分な面積を確保でき、大きな電力を環境から取り出すことができるからだという。このような太陽電池の実現には、高いエネルギー変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換する効率)、機械的柔軟性、耐水性の3つの要素を同時に満たす必要がある。

今回、理研を中心とする共同研究チームは、厚さ3マイクロメートル(μm、1,000分の3mm)という超薄型の有機太陽電池の作製に成功した。これは、厚さ1μmの基板フィルムおよび封止膜を利用しており、曲げたりつぶしたりしても動作する。

また、衣服に貼り付けることができ、洗濯も可能。エネルギー交換効率は従来の4.2%の2倍近い7.9%を達成、さらに2時間水に浸してもエネルギー交換効率は5%程度しか低下しなかった。

開発の決め手となったのは、2012年に理研の研究グループが開発した有機半導体ポリマー「PNTz4T」を用いて、環境安定性に優れた逆型構造の有機太陽電池を超薄型基板上に作製できた。さらに、この超薄型有機太陽電池をあらかじめ引張させたゴムでサンドイッチすることで、伸縮性を保ちながら耐水性が大きく向上する封止を実現できた。

センサーやマイクロチップなど、電子機器を衣服や布地(テキスタイル)に埋め込み、情報収集や遠隔管理などの機能を備えた素材を「e-テキスタイル」あるいは「スマートテキスタイル」と呼ぶ。研究グループによると、今後このような素材を利用したウェラブル端末に向けた長期安定電源として大きく貢献するものと期待できると説明する。