慢性透析患者のQOLを高める新治療法を開発

東北大学大学院医学系研究科附属創成応用医学研究センターの中山 昌明特任教授のグループは、慢性透析患者における透析治療の副作用を改善する「電解水」を用いた新規の透析システムを開発した。

現在、国内の透析患者数は30万人を超え、その数は年々増加している。日本の血液透析は世界的にも優れていますが、治療の副作用である透析合併症を完全に抑えることは難しく、患者の就業率や生活の質(Quality of Life)の低下が問題となっている。

この透析合併症の原因には、透析中に生じる生体内の酸化ストレスと炎症が関わっていると考えられている。しかし、現状これらの要因を安全に抑える手段はない。慢性疾病患者の社会復帰と就業が求められている現在、透析合併症を抑える新たな治療法の開発が重要な課題となっている。

こうした背景の中、東北大学と日本トリムは、水の電気分解によって生成される水素分子を含む水である電解水が生体内で酸化ストレスを抑えることに注目。電解水の透析治療への応用を目指して2006年から共同研究を行ってきた。この共同研究において、電解水透析システムを開発し、2011年から臨床試験を実施してきた。

今回、臨床試験の中間発表として、電解水透析システムを用いることで、透析後の疲労感や全身掻痒感、高血圧といった副作用を抑えることができる可能性を明らにした。

研究グループによると、今回の結果は、電解水透析が慢性透析患者の生活の質(QOL)を向上させることを示しており、透析システムによる治療は透析患者の健やかな日常生活および積極的な社会復帰に貢献することが期待されるという。研究成果は、米国科学誌「PLOS ONE」電子版に掲載された。