ルネサスのSoC向けにCodeplayのOpenCL基盤

ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)と英Codeplay Software Ltd.(以下、Codeplay)は、ルネサスの車載用SoC(System on Chip)「R-Car」向けにCodeplay独自のOpenCLフレームワーク「ComputeAorta」を提供すると発表した。

ComputeAortaは、ルネサスが長年開発に注力している低消費電力で高い並列処理性能を実行できる画像認識/コグニティブ処理専用IP(Intellectual Property)「IMP-X5」用のソフトウェア開発をサポートする。またCodeplayは、OpenCLとC++を単一ソースで記述可能な言語「SYCL」をサポートする「ComputeCpp」を提供する。

これらにより、ユーザーはC++の特長であるオブジェクト指向プログラミングの手法を取り入れつつ、標準的なC/C++言語の開発環境で画像認識ソフトウェアやオープンソースの「TensorFlow」ライブラリなどを使用したディープラーニングのソフトウェアを開発できる。ルネサスでは、ユーザーはR-Carの高性能と低消費電力の特徴を活かしながら、先進運転支援システム(Advanced Driving Assistance System:ADAS)の開発期間を短縮できると説明する。

ComputeAortaは、自動車のOEMメーカーなどがR-Car、特にIMP-X5のコンピューティング性能を最大限に活用するためのOpenCL向けハードウェア抽象化レイヤー。ComputeCppは、OpenCLをC++に拡張するためのフレームワークであるSYCL実装の一つ。ユーザーはComputeCppを使用することで、異種混在環境でのマルチスレッドプログラミングを単一のC++ソースコードで実装できる。

また、ComputeAortaとComputeCppを活用することで、ユーザーは標準的なC/C++言語の使いやすい開発環境を使用できる。さらにユーザーは標準化されたOpenCL、SYCL言語仕様のみを学習すればよく、IMP-X5ハードウェアの詳細を理解する必要はなくなる。ルネサスによると、従来は1カ月程度の期間を必要としていたIMP-X5上のマルチスレッドプログラミングをわずか数日で完成させることができ、システム開発期間を短縮できるという。

今後、ルネサスとCodeplayは両社の協業の下、ComputeAortaを「R-Car V3M」を中心に「R-Car H3」を含む他のR-Carにも拡充していく。