昨今、地球及び惑星科学の研究分野において、データ同化という手法が注目されている。端的に言えば数値シミュレーションに実測データを取り入れる手法のことであり、観測データの説明を受け入れられやすいものにするために、広く用いられるようになった。
データ同化はほかに、予測のための最適な計算条件やシミュレーションモデルに必要なパラメータの最適値を求めることなどを目的に行われる。データ同化手法を地盤の変形計算にうまく組み込むことで、土の基本的な変形特性を確認しながら地盤強度を精度よく予測することが可能になるという。京都大学 村上章 農学研究科教授らの研究グループは、これまで困難であった土の弾塑性モデルの選択と材料パラメータの同定を同時に行い、それらの最適な組み合わせを合理的に決定する手段を提案――。神戸空港人工島の地盤データを用いて、同提案手法の有効性を実証した。
数値シミュレーションなどによって得られる予測値を、実際に観測されるデータに合理的に近づける作業であるデータ同化によって、砂や粘土といった地盤材料の変形を計測したデータをシミュレーションモデルと融合し、より実際の地盤の動きに近い予測ができるような適切な構成モデル(加えた力と変形量の関係を記述するモデル)と弾塑性材料(作用した力がなくなると変形が回復する性質と変形が回復しない性質の両性具有材料)の材料パラメータを決定することに成功したという。
地盤構造物の設計には、事前に、材料となる土の弾塑性モデルを選定する必要があり、上述の提案手法により、従前より精度の高い将来予測が可能となり、実務上の応用が大きく期待される。
研究成果は国際ジャーナル電子版「Numerical and Analytical Methods in Geomechanics」に掲載された。