臨床データの不足をITで補う

不妊治療患者は年々増加傾向にある。日本では6組に1組のカップルが患者とされていて、体外受精、顕微授精、凍結胚移植を合せた実施件数は'14年時点で約39万件――。10年間で3倍超に増加している。

その治療は長期間となるケースが多く、患者の身体的、経済的負担が大きくなりがちである。出産希望者の高齢化が今後さらに進むことが予想され、より高い効果をあげられる手法の確立が求められている。不妊治療分野は他の疾患分野と比べると歴史が浅く、豊富な臨床データに基づいた医療が十分に確立されていない。医師は経験則にて最適と考えられる治療法を判断せざるを得ないという。

医療法人三慧会(IVF JAPANグループ)と富士通は、効果的な不妊治療を実現する診療支援システムの実証研究を今月から12月まで実施する。総合IT(情報技術)企業、富士通が開発した不妊症版類似症例検索システムを活用。三慧会が数多の治療現場で得た、過去に不妊治療研究の協力に同意した約1,000名のホルモン検査値や治療経過等に関するデータから、治療対象患者と類似する複数の過去データを抽出する。

実証研究では、抽出データすなわち過去患者の治療ごとの効果――採卵数や正常受精数、成熟卵数、胚グレードを可視化することで、新たな患者に行う治療や投薬の効果を予測する。すでに不妊治療の結果が判明している過去患者の診療データを予測精度の検証用データとして活用し、三慧会が不妊症の診療支援システムとしての有効性を検証する。

両者は今後、過去患者の検査値や治療経過などに関するビッグデータに基づいた診断や治療により、不妊治療領域のさらなる発展を目指す。システムの治療効果予測によって適切な治療法の選択を支援する。患者の治療回数を減らし、身体的、経済的負担を軽減するとともに、医師の業務負担軽減を実現する構えだ。