いま日本では、老朽化が進むインフラの効率的な維持管理の早急な対応が求められている。なかでも全国に約70万ある橋梁の点検には、膨大な労力とコストが発生している。
一方、特に地方部を中心に、点検の専門技術者不足が懸念されている。
点検結果の判定は、技術図書等による定型化はなされているものの、その判断は専門技術者に委ねられるため、技術者により判定結果にバラツキが生じること、省力化が図られにくいことなどの問題が生じているという。日本ユニシスは、石川県金沢市に本社を置き年間500橋以上の点検・診断業務を受託している日本海コンサルタントと、「AI(人工知能)技術を活用した橋梁の劣化要因・健全性判定支援システム」の共同開発に取り組むことを発表した。
日本海コンサルタントが提案し、国土交通省の「平成29年度建設技術研究開発助成制度」に採択された同システムでは、AIの画像認識技術により、点検写真等から劣化要因や健全性を自動判定することで、「専門技術者の省力化」および「劣化要因・健全度判定精度の確保・向上」を図るとともに、地方の劣化特性を踏まえた「汎用性の高いシステムの実現」を目指す。
両社のAI技術やインフラ技術の各分野に熟知した産学官連携の体制により進める。研究開発により、膨大な橋梁点検業務において、劣化判定時間の短縮ができ、点検技術者の時間の有効活用が可能となり生産性向上に寄与――。判定結果の精度向上やバラツキの低減だけでなく、劣化損傷箇所の見落とし防止などにも期待でき、橋梁・コンクリート以外に、他の材質(鋼等)や他の構造物(港湾、河川、建築物等)への適用の拡大が望める。
開発技術の成果は、実際の点検・維持管理業務において活用を予定していて、両社はこの研究開発を通じて、「ICTを活用したレジリエントな社会インフラの構築」に貢献していくという。