斜面の水分量のみで危険を検知、すばやく通知

温暖期に発生する大雨の影響による災害が頻繁に発生している。とくに、1957年に発生した集中豪雨は土砂災害などにより甚大な被害が出たことから、住民や市職員は長年にわたり、災害対策能力アップに向けた取り組みを推進している。

長崎県南の中央に位置する諫早市において、NECは、土砂斜面の危険性の変化をリアルタイムに見える化する「土砂災害予兆検知システム」を構築。同システムは、諫早市飯盛町の土砂災害特別警戒区域内にて4月から稼働していて、避難指示や避難勧告などの各種発令の判断を支援する「発令判断支援システム」と連携した運用を今月から開始している。

諫早市はこれをモデル的に導入することで、大雨や集中豪雨による土砂斜面の危険性の変化をリアルタイムかつ定量的に見える化し、迅速な避難勧告や避難指示の有効性を見極めていくという。

「土砂災害予兆検知システム」は、短期間かつ簡易に予兆検知の仕組みが構築できる。NECが世界で初めて開発した、土砂に含まれる水分量のみから斜面崩壊の危険度を算出するデータ解析技術を活用していて、水分量を計測するセンサ子局を土砂斜面に設置するだけで、リアルタイムに斜面崩壊の危険性を可視化する。複数のセンサ子局の測定データをまとめてクラウドに送信する中継局、測定データを蓄積・解析するクラウドサービスから構成されていて、崩壊の危険性を求める解析モデル「斜面安定解析式」に必要な土砂の重量・粘着力・摩擦、土中の水圧という土砂状態を表す4種のパラメータを、土砂に含まれる水分量のみから算出する。

システムは工事不要のバッテリーと省エネ設計により2年程度の連続稼働が可能なため、職員による維持管理の負荷を軽減。土砂災害の予兆検知につながる情報取得とともに、「発令判断支援システム」で危険性や降水量のアラート通知などを統合的に管理することで、住民への迅速な避難勧告や避難指示に役立てられる。