超高層建物の地震対策にAIを活用 NTTファシリティーズ

NTTファシリティーズは、超高層建物の長周期地震動対策として、業界初となる振動制御にAIを活用する新しい「アクティブ制振技術」を開発したと発表した。

アクティブ制振技術は、強化学習とディープラーニングを組み合せた深層強化学習により最適な振動制御を学習したAIが、地震の揺れに応じて建物内部のダンパーを電動アクチュエーターで制御するもの。

AIの開発には、コンピューターにおける建物地震応答シミュレーターを用いて制振効果の高い制御を自動的に学習させた。制御を学習したAIは、建物に設置されるセンサーの計測データを用い、地震時にダンパーの減衰力を自律的に制御して建物に生じる揺れを抑制する。エヌ・ティ・ティ・データとNTTデータ数理システムの協力の下、NTTグループのAI技術「corevo」を活用して開発を進めた。

また、NTTファシリティーズは20階建の建物を想定した大型模型試験体を、同社が保有する「広帯域対応大型3次元振動試験システム」に設置して長周期地震動を再現して検証した。

振動実験では、長周期地震動の成分を持つ地震動波形の他、建物が共振する地震環境下における制振効果を確認するため、模型試験体の1次固有周期と同じ周期の正弦波を入力波形とする振動実験も実施。その結果、建物の揺れをパッシブ制振と比較して50%以上低減できることを確認した。

同社は、既存超高層建物の長周期地震動対策へのこの技術の導入によって、パッシブ制振と同じ制振性能を概ね半数のダンパーで実現させ、工事量の削減や工事期間の短縮を通して対策工事コストを最大30%削減することを目標に掲げている。