電力・水素複合エネルギー貯蔵システムの実証実験 東北大学と前川製作所

NEDOと東北大学、前川製作所は、水素貯蔵システムと電力貯蔵装置を組み合わせて、通常時の再生可能エネルギーの有効利用と非常用電源としての機能を併せ持つ「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を新たに考案・開発し、宮城県仙台市茂庭浄水場で実証運転を開始した。

NEDOは、2014年度から「水素社会構築技術開発事業」の一環で、仙台市水道局協力の下、同市茂庭浄水場をモデルに水素を利用して安定的なエネルギーを供給するための技術開発を実施している。この事業では、経済・技術成立性を見通す全体コンセプトを検討し、これに基づく技術を検証している。

東北大学と前川製作所は、大容量化や小型化に優れた水電解装置や燃料電池、水素貯蔵システムと、耐久性や即応性、高効率性に優れた電気二重層キャパシタなどの電力貯蔵装置を組み合わせた新しいシステムを考案・開発した。

新規開発した電力・水素複合エネルギー貯蔵システムは、平常時の太陽光発電の有効利用だけでなく、非常時のエネルギーの長時間安定供給も可能にする。また、仙台市茂庭浄水場の20キロワット太陽光パネルを用いた実証システムが完成し、実証運転を開始した。

同システムでは、大容量性やコンパクト性に優れている水素貯蔵システムと、即応性や耐久性、高効率性に優れている電力貯蔵装置を組み合わせている。水素エネルギーを用いることにより、非常時に必要となる3日分のエネルギーを省スペースで貯蔵できる。非常時(停電時)でも太陽光発電から水素を生成することで、外部からの燃料調達なしでも運転を継続できる。

実証実験では、「燃料電池や水電解装置の応答性、制御性、耐久性」「高精度変動補償に適した太陽光発電出力の予測方法と最適な変動補償方法」「太陽光発電出力の変動補償に適した電力・水素貯蔵システムの入出力制御方法」などを検証する。

今回の実証運転を通して得られる結果を踏まえて、新たな浄水場向けのエネルギーシステムの早期実現に向け、実規模システムのコスト低減に有効なシステム構成機器の容量選定指針やシステム運転制御方法を確立するという。