緑内障の重症度と抗酸化力との関係を解明

東北大学大学院医学系研究科は、緑内障患者における全身の抗酸化力と緑内障重症度の関係を明らかにした。緑内障における眼圧以外の因子として抗酸化力に注目し、全身の抗酸化力が不足することが緑内障病態に影響を与えていると考察する。

東北大学大学院医学系研究科 眼科学分野の中澤 徹 教授、檜森 紀子 助教、浅野 良視医師らのグループが発表。文部科学省科学研究費の支援を受けて実施された。研究成果は、英国の「Scientific Reports」に掲載された。

緑内障は日本人の中途失明原因第一位の疾患。現在唯一エビデンスのある治療法は眼圧下降療法(薬物、レーザー、観血手術)だが、日本の緑内障患者の多くは眼圧が正常範囲である正常眼圧緑内障であり、眼圧以外の因子が発症に関わっている可能性がある。

研究グループでは、眼圧以外の緑内障へ影響を与える因子として酸化ストレスに打ち勝つ抗酸化力に着目し、緑内障重症度との関係を調査した。

抗酸化力とは、活性酸素に対する防御力のこと。また、酸化ストレスとは、細胞内で発生した活性酸素と消去のバランスが崩れ、DNAやタンパク質、脂質が傷害されることを指す。

抗酸化力の指標となる BAP(Biological Antioxidant Potential)を、ヒトの血液サンプルからフリーラジカル分析装置を用いて測定した結果、65歳以下の比較的若年男性の緑内障患者ではBAPと緑内障重症度である網膜神経節細胞数に正の相関があることを見いだした。

さらに、65歳以下の男性緑内障患者において解析を行った結果、BAPは網膜神経節細胞数に対して影響を及ぼす因子であることが示された。

調査の結果、65歳以下の男性において抗酸化力が低いと緑内障が重症化しやすいことが明らかになった。また、比較的若年の緑内障患者における全身的な抗酸化治療は、視野維持に有効な治療法になる可能性があると示されたという。