近年、証券の売買における不公正取引が複雑化している。コンピュータを使ったアルゴリズム高速取引や2つの市場をまたいでの取引などがあり、株価操作やインサイダー取引等が行われていないか日々チェックする売買審査は、その対象範囲が拡大している。
疑わしい注文を正確かつ迅速に判断することがより重要になっている。売買審査業務において、不公正取引の可能性のある注文を、あらかじめ設定した基準によってシステム的に幅広く抽出し、そのデータの中から審査担当者が不公正取引の可能性を判断し、疑いのあるものについては更に詳細な調査を進める。2段階フローを実施しているが、初期調査のデータが多いために、審査担当者の業務効率が上がらない課題を抱えていたという。
SBI証券は、金融とITを融合させたFinTech技術活用の一環として、NECと人工知能(AI)を売買審査業務に適用する実証実験を開始した。今回の実証実験では、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つであるディープラーニング(深層学習)技術を搭載した「NEC Advanced Analytics - RAPID機械学習」を導入する。
RAPID機械学習は、事前に手本となるデータを読み込むことで傾向を自動で学習するため、データの分類・検知・推薦などの高精度な判断ができる。NEC北米研究所の独自技術により、分析エンジンの高速化と軽量化を両立していて、大規模なマシンリソースが不要。サーバ1台から分析処理ができるため、幅広い業務や企業への適用が可能である。
この「RAPID機械学習」に過去の不公正取引を学習させるSBI証券では、審査担当者による初期調査の大部分をAIに委ね、審査担当者の業務負担を減らして、人はより高度な分析を要する取引に注力することができると期待している。
これまで発見が難しかった新たな不公正取引の傾向もつかむことができると考えているとのことだ。