ニュートリノの「CP対称性の破れ」の可能性が95%に

東海―神岡間長基線ニュートリノ振動実験 国際共同研究グループは、2016年夏の結果公表からデータ量を約2倍に増やして世界最高感度の測定を行った結果、ニュートリノにおいてCP対称性が破れている可能性が95%となったと発表した。

ニュートリノとは、物質を構成する最小の単位である素粒子の一つ。電子ニュートリノ、ミューオンニュートリノ、タウニュートリノの3種類がある。反ニュートリノとは、中性子が陽子に崩壊するベータ崩壊の過程で放出されるニュートリノに対する反粒子のこと。

また、ニュートリノが飛行中に種類が入れ替わることを「ニュートリノ振動」と呼ぶ。

CP対称性の「C」とはcharge(荷電)、「P」とはparity(偶奇性)のことで、粒子と反粒子を同等と考える対称性を指す。粒子をその反粒子に置き換えても、同時に空間座標の向きを逆にすれば同じ法則が成り立つことをいう。

宇宙誕生時は粒子と反粒子が同数だったが、この対称性が破れたことで反粒子は消えたと言われている。

T2Kコラボレーションは、「ニュートリノと反ニュートリノの違い」について検証を進めてきた。2010年~2016年に取得したデータに基づき、2016年に両者に違いがあり得ることを90%の信頼度で示していた。

今回、新たに2016年10月~2017年4月に取得したデータを加え、新しい解析手法を用いることでデータ量を約2倍に増やし、ニュートリノと反ニュートリノの間でニュートリノ振動が起きる頻度の違いを世界最高感度で検証した。

その結果、ニュートリノと反ニュートリノの違いがある確率は95%に高まり、CP対称性の破れが存在する可能性がより明瞭になったという。

T2Kコラボレーションでは、「ニュートリノと反ニュートリノのニュートリノ振動の確率が違う」ということが事実であれば、万物を構成する素粒子の仲間であるクォークでは破れているCP対称性がニュートリノでも破れていることを意味すると説明する。

また、「宇宙の始まりであるビッグバンで物質と反物質が同数生成されたのに、現在の宇宙には反物質はほとんど存在していない」という宇宙の根源的な謎を解明する上で大きなヒントになるという。

今後、ニュートリノビームを作成する陽子ビームの強度をさらに高め、目標のデータ量を当初目標の2.5倍(現在の約9倍)に引き上げることで、ニュートリノにおけるCP対称性の破れを99.7%の信頼度で検証することを目指す。