がん免疫療法にひかり、リンパ球関与の仕組み明らかに

その罹患数が男女計で全国2位である。悪性腫瘍の胃がんにより、年間約5万人の方が亡くなっている。近年、免疫療法が注目されているものの、それにより効果が得られるのは一部の症例のみであり、がん免疫システムの全容解明が急がれる。

特に現行のがん免疫療法に抵抗性であると予想される、びまん型胃癌(スキルス胃癌)について、その全体像の解明が求められていた。がん免疫システムの包括的理解によって、既存のがん免疫療法の効果の最大化や、新しい効果的な免疫療法が実現される――その可能性があるという。

東京医科歯科大学難治疾患研究所ゲノム病理学分野の石川俊平教授と加藤洋人助教、河村大輔助教らは、東京大学 先端科学技術研究センターゲノムサイエンス部門(油谷浩幸教授)及び大学院医学系研究科人体病理学・病理診断学分野(深山正久教授)との共同研究により、胃がん組織におけるリンパ球の抗原受容体の全体像を次世代シーケンサーを用いた免疫ゲノム解析で明らかにした。

びまん型胃癌組織に浸潤するリンパ球について、免疫レパトア解析と呼ばれる詳細な免疫ゲノム解析を行うなかで、多くの症例のがん組織中では特定のBリンパ球が増えていることを見いだし、それらのBリンパ球が作り出す抗体が糖鎖の一つである硫酸化グリコサミノグリカンを認識している――すなわち硫酸化グリコサミノグリカンが、がん組織における主要ながん免疫抗原であることを突き止めた。

また、免疫ゲノム解析によって得られたがん特異的に反応するBリンパ球のDNAシーケンス情報をもとに、抗腫瘍活性を有するヒト抗体を作成することに成功した。

糖鎖ワクチンや抗体医薬品などのがん免疫療法の開発につながる可能性があるという。
研究成果は、米国東部時間の8月1日に、国際科学誌「Cell Reports」で発表された。