ミカンのポリフェノールに緑内障治療の可能性を見いだす 東北大学

東北大学は、ポリフェノールの一種である「ヘスペリジン」がマウスの網膜神経節細胞を保護する効果を示すことを明らかにした。食品素材であるヘスペリジンをサプリメントなどで内服することで、緑内障性の網膜神経節細胞障害を軽減させる可能性があるという。

東北大学大学院医学系研究科 眼科学分野の中澤 徹 教授、前川重人 医師、佐藤孝太 助教らのグループが発表。研究成果は、英国の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

緑内障は、眼圧が上昇して視神経を圧迫し、視野欠損が出現・進行する疾患。網膜神経節細胞および視神経が障害されることで発症する、日本人の中途失明原因第一位の疾患だ。その治療として薬剤や手術によって眼圧を降下させる治療法が普及しているが、眼圧が正常の場合には効果が薄いことが問題となっている。

今回、研究グループは、眼圧以外の緑内障へ影響を与える因子として酸化ストレスに着目。酸化ストレスとは、細胞内で発生した活性酸素と消去のバランスが崩れ、DNAやタンパク質、脂質が傷害されること。

41種の食品成分の中からマウス培養網膜細胞に対して抗酸化作用を有する素材を調査した。その結果、みかんの皮に含まれるポリフェノールの一種であるヘスペリジンが最も高い抗酸化能を持つことを見いだした。

研究グループによると、酸化ストレスの指標である脂質過酸化物や細胞死を誘導するタンパク質であるカルパインの活性化、炎症性サイトカインの発現を抑制することで、神経保護作用を示したためと考えられるという。

さらに、ヘスペリジンは網膜障害により生じる脳波の減弱や視力低下を防ぐことが電気生理実験や行動学的評価から明らかとなった。

近年、緑内障の発症・進行と酸化ストレスの関与が注目されており、血液中の抗酸化力が低い緑内障患者は緑内障が重症化する傾向があると言われている。今回の研究によって、ヘスペリジンが持つ抗酸化作用が緑内障治療の一助となることが期待される。