群れる生物の集団行動の運動メカニズムを解明 九州大学

九州大学は、アクティブマターの代表例である微生物バクテリアの「集団渦運動」を最新の微細加工技術で解析し、微生物集団の複雑な渦巻き運動がシンプルな幾何学的法則で制御できることを明らかにした。

九州大学大学院理学研究院の前多裕介 准教授の研究グループの成果。2017年7月に英国科学雑誌「Soft Matter」電子速報版に掲載された。

海中や水族館で目にする魚の群れなど、自律的に動き、ときに集団となって群れや渦といった大きな構造を形成する物質群を「アクティブマター」という。微生物バクテリア、真核細胞、アリなどの昆虫、さらには魚や鳥、ヒツジやヒトなど大型動物も含む。

アクティブマターは美しい生態現象と関係がある。その一方で農業被害をもたらすイナゴの大群や人間を死に至らしめるがん細胞集団など、生活に悪影響を及ぼすものもある。研究グループでは、その動きの制御は社会的にも重要な課題と説明する。

今回の研究では、半径「R」の円を二つ、それらの中心間距離を「Δ」だけ離し、2つの円が重なった形の小さな容器を作成し、容器内でバクテリアの集団運動を計測した。

その結果、2つの渦からなる「渦ペア」パターンが出現すること、「Δ/R」の値を調節することで渦ペアを制御できることが分かり、この幾何法則を「Vicsekモデル」という群れ運動に関わる理論的モデルから導出することに成功した。

また、より多くの渦が存在する場合でも「Δ/R」の値を調節するだけで、渦運動の組み合わせを自在に統制できることを明らかにした。

研究グループでは、今回見出された幾何法則は、そのシンプルさから他の集団運動にも適用することができると考察する。アクティブマターの代表例であるバクテリアの集団運動を制御する幾何法則は、生物にとどまらず磁性体や超伝導体とも関連があるという。

その一例として、人工知能が搭載された自動車の渋滞の回避や、互いに衝突せずに安全かつ効率的な運転が求められるドローンの集団的な自動運転の実現に大いに貢献すると期待できると説明する。