下水処理等をIoT管理
下水道は生活排水と雨水を処理施設へ送るためにある。下水処理場はそれらを相当きれいにして河川などに還す。水は湖や海で蒸発していずれ雨となり降ってくる。量が想定を超えて、地面から水が噴き出す事態になっている。
水、というと上水道を想像しがちだが、下水道なくして近代国家たり得ない。19世紀、フランスのパリは下水道網が発達していたからこそ、当時最も進んだ文明都市のひとつであり、ユゴーが「レ・ミゼラブル」を書けたのだ。が、ジャン・バルジャンが逃げ回る暗渠は汚水をセーヌ川に垂れ流していたようで、印象派の代表的画家モネが描いた風景は、きっと臭かったに違いない。下水道がすべて下水処理場につながっていたら、ジャンを追い続けたジャベール警部の運命も変わっていただろう。
今日、IT(情報技術)と監視カメラ網が発達しているために、パン一個を盗んで逃げ回り、逃げおおせる物語はファンタジーになる。暗渠は舞台装置としてではなく、現実的により重要な役割を果たし、処理場は未来に向けていっそう進化する。
下水道分野において、株式会社クボタは、IoT(Internet of Things)による新サービス「クボタスマートインフラストラクチャシステムKSIS)」の実証実験を、NTTグループと連携し行う。
千葉県内の下水処理場にて(株)NTTドコモの「LoRa®」、省電力広域無線通信技術(LPWA)を活用し、地下内でのセンサ情報の収集を可能にし、広大な敷地にある設備の遠隔監視や現場作業の効率化を実現する。また、奈良県内の下水処理場では、NTTテクノクロス(株)のインテリジェントマイクおよび高精度音声認識技術の活用により、騒音環境下での通話、点検の記録や指示の音声入力を可能にする。さらに熊本市においては、同市提供の「河川・排水機場遠隔監視システム」に(株)ハレックスの降水量、流域雨量指数を追加し、ゲリラ豪雨による河川決壊を防ぐための内水排除作業実施の判断基準に活用する。
それぞれ来年1月あるいは4月からの実用化を目指す。
内容の一部を今週東京ビッグサイトで開催の「下水道展'17」にて、パネル展示するという。
クボタは、これら一連の実証実験により、通信品質の安定性や機能の精度向上を図り、全国の自治体およびプラント維持管理会社への導入を推進する。とともに、NTTの人工知能(AI)技術、「corevo™(コレボ)」による故障検知・IoT技術なども視野に入れていて、水環境インフラの遠隔監視や現場作業の効率化につながる研究やサービス開発に取り組む構えだ。