皮膚病の臨床画像をディープラーニング

昨今、ディープラーニング(深層学習)をはじめとした人工知能(AI)の進化に加え、...

昨今、ディープラーニング(深層学習)をはじめとした人工知能(AI)の進化に加え、クラウドなどIT(情報技術)環境の整備により、音声や画像等――非構造化データの分析および解析が容易になりつつある。CTやMRI、レントゲン写真など画像の取り扱いが多い医療分野では、AIによる画像認識技術の実用化が期待されている。

厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」では、AIの適用領域として皮膚疾患の画像診断が挙げられている。理由は、同疾患では臨床像による診断が多く、その精度が医師の経験に大きく左右されるためである。なかでも早期発見が重要である皮膚がんの患者数は1999年から2014年にかけておよそ2倍に増加していて、高度な診断を可能にする医師向けの診断サポートシステムを求める動きが大きくなっているという。

京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)と筑波大学医学医療系皮膚科 藤本学 教授、藤澤康弘 講師は、AIを活用した画像認識による医師向けの皮膚疾患診断サポートシステムの実用化を目指し、共同研究を開始した。

皮膚病の臨床画像をディープラーニングし、メラノーマ(悪性黒色腫)などの皮膚がんをはじめとする複数の皮膚腫瘍を判別する「高精度な画像認識モデル」を開発。その次段として皮膚がん以外の皮膚病に適用範囲を拡大し、臨床画像から皮膚病全般の診断をサポートする、業界標準となるシステムを開発する。

共同研究において、KCCSは画像認識モデル作成サービス「Labellio」の提供や画像認識システムの構築で培ったノウハウを活かし、システム開発を行う。一方、筑波大学は、日本皮膚科学会の認定主研修施設である筑波大学附属病院皮膚科にて20年にわたり蓄積した2万枚を超える臨床画像を、AIの教師データとして提供するとともに、皮膚疾患診断サポートシステムの精度評価、医療現場における適応性の評価を行う。

これにより皮膚科専門医の診療支援に役立つことはもとより、皮膚科専門医がいない医療過疎地や専用機器がない環境において、市販のデジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像でも診断のサポートができる簡易型診断サポートシステムも構築可能となる。
皮膚科専門医の受診が必要な患者を早い段階で見つけることで医療レベルの向上に貢献するという。KCCSと筑波大学は、来年3月までこの共同研究を行い、3年後の実用化を目指す。さらに、将来的には両者の知見をあわせることで2,000以上の皮膚疾患が判別できるシステムを目指し研究開発を進める構えだ。