理研、匂いの素早い検出と濃度の弁別に優れた細胞タイプを発見
理研 脳科学総合研究センター知覚神経回路機構研究チームの風間北斗チームリーダーらの研究チームが発表。研究成果は、米国の科学雑誌「Neuron」(オンライン版)に掲載されている。
動物の脳は様々なタイプの細胞から構成されている。脳回路が機能を生み出す際には、各タイプの細胞はそれぞれ異なる役割を担っていると考えられてる。理研によると、その役割の詳細やタイプごとの違いを生み出す神経基盤についてはよく分かっていなかったという。
今回、理研の研究チームは、ショウジョウバエの脳内にある神経回路のうち、匂いの情報処理をつかさどる「キノコ体」と呼ばれる回路に着目。キノコ体には3つのタイプの細胞があり、これらの細胞は約50個の糸球体から構成される触覚葉という脳領域から、匂いの情報を興奮性の信号として受け取る。
研究チームはまず、これらの3タイプの細胞が糸球体からの情報をどのように統合しているのかを、光遺伝学、二光子励起法、電気生理学的手法を組み合わせて調査(図A)。その結果、入力の統合においてはタイプ間に差はなかった。次に興奮性の入力を受けた後に、各タイプの細胞がどのように振舞うのかを調べた。その結果、一つのタイプが他のタイプよりも高い興奮性を持つと同時に(図B)、抑制性の細胞を強く活性化させることが分かった。
研究チームは「興奮性の高い細胞タイプは匂い刺激に対して最も素早く応答し、かつより低濃度の匂い刺激に応答する」、「このタイプは低い濃度の匂いの弁別に役立ち、適切な抑制性の入力がないとこの弁別能力がなくなる」という2つの仮説を立てた。これらの仮説を検証するために、レーザー顕微鏡を用いて、各タイプの細胞の匂いに対する応答をカルシウムイメージングで調査した。その結果、これらの仮説が正しいことが確認されました(図C)。
■ショウジョウバエキノコ体の各細胞タイプの匂い濃度の弁別能力
理研では、今後、各細胞タイプのさらなる役割とその神経基盤の解析を進める。ヒトを含めた様々な動物が持つ匂いを認識する能力の神経基盤の理解につながると期待しているという。