国立大学法人岡山大学(以下、岡山大学)は2017年7月18日、骨粗鬆症治療薬クロドロン酸が分泌小胞内にATPを運ぶ輸送体(VNUT)を阻害することで、神経因性疼痛(とうつう)や炎症性疼痛、慢性炎症を改善できることを世界で初めて突き止めたと発表した。
岡山大学自然生命科学研究支援センターの加藤百合特任助教、宮地孝明准教授と大学院医歯薬学総合研究科、学校法人松本歯科大学、学校法人久留米大学、国立大学法人東北大学、国立大学法人九州大学、学校法人東京農業大学、味の素株式会社の共同研究グループが成功。研究成果は2017年7月18日、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」電子版に掲載された。
研究グループは、疼痛を引き起こす神経伝達を遮断するために、神経伝達の起点となる伝達物質の分泌機構に着目。骨粗鬆症治療薬の1つであるビスホスホネート製剤(第一世代)が、この分泌に必須である小胞型神経伝達物質トランスポーターを阻害するか検証した。その結果、第一世代のビスホスホネート製剤であるクロドロン酸が小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)を、選択的かつ可逆的に、極めて低濃度で阻害し、神経細胞からの ATP放出が遮断されることを突き止めた。
また、研究グループは、慢性疼痛を引き起こす原因になる慢性炎症にも着目。クロドロン酸は免疫細胞からのATP分泌を遮断することで、炎症性疾患の原因となる炎症性サイトカイン量が低減し、抗炎症効果を発揮することを発見した。
さらに長年不明であったクロドロン酸の鎮痛効果の作用メカニズムを明らかにした。岡山大学はVNUT が慢性疼痛や慢性炎症の発症に重要な役割を担うことを受け、その治療効果は予想よりもはるかに大きいものであると説明する。骨粗鬆症治療効果よりも低濃度で鎮痛・抗炎症効果を得ることができたという。
今後、さまざまな難治性疾患に関してクロドロン酸の治療効果を検証することで、さらなる研究の発展が期待される。