電力ユーザーが仮想発電所をつくる

東日本大震災後、大規模集中電源に依存した硬直的なエネルギー供給システムからの脱却と、急速に普及している再生可能エネルギーの安定的かつ有効な活用とが差し迫った課題となっている。

工場や家庭などが有する蓄電池や発電設備等を、高度なエネルギーマネジメント技術により統合制御し、あたかも一つの発電所(バーチャルパワープラント)のように機能させることで、電力の需給調整に活用する実証事業を行う――。経済産業省は、統合制御に関する技術検証の実施やエネルギーリソースの遠隔制御対応(IoT)化等に取り組み、需要家側エネルギーリソースの有効利用および需給調整への活用により、再生可能エネルギーの導入拡大と更なる省エネルギー・電力の負荷平準化、系統安定化コストの低減を図るという。

同省が今年度実施する「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業」。この取り組みへの参画を、KDDI株式会社と株式会社エナリスが公表した。両社は、需要家宅に分散する蓄電池等の大量のエネルギーリソースを効率的に確保するための仕組みの構築と、経済価値の高いネガワット取引を実現するための技術確立を行い、蓄電池等のエネルギーリソースを供給力・調整力として実用化することを目指す。

電力ピーク需要を踏まえた電源投資への抑制効果や再生可能エネルギーの普及・拡大だけでなく、IoT(Internet of Things)技術を活用する先進的な事例としても、今後の新産業の創出に寄与するものと考えているという。

昨年度の「バーチャルパワープラント構築実証事業」に、エナリスを幹事企業とする6社で参画し、ネガワット取引の基盤システムおよびコンソーシアムメンバー各社との連携システムの構築を行ってきた両社は、今回、京セラ株式会社、パナソニック株式会社等とも協力し、この実証事業を通じて、将来のエネルギー社会の高度化に貢献していくとした。