アメーバのような液体の人工合成に成功、東京大学とNIMS

国立大学法人東京大学(以下、東京大学)と国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下、NIMS)の研究チームは2017年7月13日、流動性の変化をひとりでに繰り返すアメーバのような液体の人工合成に世界で初めて成功したと発表した。

東京大学大学院工学系研究科の小野田実真大学院生、玉手亮多研究員、吉田亮教授、NIMSの上木岳士主任研究員、東京大学物性研究所の柴山充弘教授らの共同研究グループが成功。研究成果は、2017年7月13日に「Nature Communications」 (オンライン速報版) で公開された。

今回、研究グループは人工合成された高分子が化学反応を伴いながら、集合と分散を繰り返す仕組みを考案。外から電気や光、熱などを一切加えることなく、ゾル(液体)状態とゲル(凝固体)状態を繰り返すアメーバのような液体を人工的に合成した。

アメーバのような原生生物や白血球などの細胞は、内部で「アクチン」と呼ばれる生体高分子が集合と分散を繰り返し、流動性を絶えず変化させ、ゾル・ゲル振動することで運動する。アクチンによるゾル・ゲル振動は、生体内でもがん細胞の転移や免疫細胞の発生、細胞分裂、傷の修復などにおいて頻繁に観察されていた。しかし、これまで生き物らしい、しなやかな動き(自律挙動)を人工的に再現するのは難しく、報告例はほとんどなかったという。

今回の研究では、アクチンの持つ機能を合成高分子がまねて、生体内で見られる生命挙動の一部を人工的に再現できた。研究グループによると、将来的にはアメーバの運動機構をはじめ生命の自律性を考察する糸口になるという。また、SF映画で描かれてきたような生き物のように自律性を持って動く新たなソフトマシンの実現につながると期待されていると説明する。