低コストかつ迅速に埋設管の腐食性調査

高度経済成長期から急速に整備されてきた、水道管の多くは法定耐用年数の40年を超え、地中で老朽化が進んでいる。近年、それら過去に埋設された鉄管の劣化リスクを評価する技術の開発が、差し迫って大切な社会的課題になっている。

水道管の腐食は、地盤の環境、特に地盤の比抵抗(導電率の逆数)に依存。比抵抗が低い塩分を含む粘土質土壌ほど腐食が進行しやすい。埋設管の交換や修理などを計画的に進めるために、一部の自治体では、地面を開削して採取した土壌の比抵抗を計測する腐食性調査を行っている。がこの方法では、掘削、土壌採取、埋戻しといった一連の作業によるコストや時間、労力の負担が大きく、多数の水道管埋設箇所で調査ができない。ために比抵抗を簡単に測定できる新たな手法が求められていたという。

産業技術総合研究所(産総研)地圏資源環境研究部門 物理探査研究グループ 神宮司 元治 主任研究員は、路面を傷つけずに、地盤の比抵抗を測定できる高周波交流電気探査装置を開発した。

路面を掘削しないために短時間で計測可能であり、急増する老朽水道管更新の優先度の決定に寄与する。今回開発の装置は、高周波を送信する送信機と送信ダイポール、受信する受信機と受信ダイポールで構成されていて、超吸水スポンジを用いて地表面への密着度を高めるとともに、通電能力が高い小型のローラー電極を新たに考案したことにより、極めて微弱な電位差を検出でき、高いノイズ耐性を有する。

従来資源探査から土木調査まで幅広く応用されてきた電気探査技術における、地表のアスファルトやコンクリートに穴を開けたり、深さ1m程度の浅い部分の比抵抗を測定することが難しかったりといった課題を解決する。

路面下に敷設された水道管周辺の地盤の比抵抗を測定して、その水道管の腐食リスクを推定できる。技術の詳細は、今月19~21日、東京ビッグサイトで開催の第9回インフラ検査・維持管理展にて披露される。