研究テーマはアナログ vs. デジタル

紙に文字を書くことがめっきり減った。手帳などはスマホアプリに変わり、読書さえデジタルでする時代に、絵手紙をもらうと嬉しかったり、原稿用紙のマス目を手書き文字で埋めていくことが新鮮だったりする。

デジタルデバイスの便利さの一方で、手書きコミュニケーション、紙で読書し学習するなどのアナログ製品を用いた行動には、デジタル製品利用時に比較して、記憶が定着しやすいなど認知的側面での利点があると示唆する研究が世界的に報告されているという。

株式会社NTTデータ経営研究所は、千葉工業大学知能メディア工学科山崎研究室、東京大学大学院総合文化研究科酒井研究室、王子製紙株式会社、ゼブラ株式会社、DIC株式会社、株式会社日本能率協会マネジメントセンターと共同で一昨年、応用脳科学コンソーシアム内に「アナログ価値研究会」を組成。「アナログ価値」を科学的に示し、その再認識とともにアナログとデジタルの融合製品やサービスの開発につなげる目的で行った実験結果をきょう公表した。

「手書き」は、タイプ文字よりも「思いが込められている」という好印象を読み手に与えうることがわかった。速記の場合は、そのような効果が弱くなることから、「心が込められている」と判断されるには、書き手が「運動のコスト(時間)」をかけて文字を書く必要があることも示唆された。一方、タイピング活字でのコミュニケーションは、短時間で入力でき、かつ「読みやすく丁寧である」という印象を与えることがわかったという。

同研究会は、様々な参加者による「デザイン思考」ワークショップで出されたアイディアの中から、スケジュールの記憶と構造的理解のしやすさを「紙(手書き)の価値」として着目し、紙の手帳とスマホの手帳アプリを用いて、スケジュール記憶課題等の実験を行いパフォーマンスに違いが生じるかなどの検証も進める予定とのことだ。