セキュリティへの投資がトップに、IT投資動向に関する国内CIO調査

IT専門調査会社IDC Japan株式会社(以下、IDC Japan)は、国内企業および団体1,197社のCIO(最高経営責任者)またはそれに準ずる人を対象として、IT投資動向に関する調査を実施。その結果を2017年7月に発表した。2017年度の国内企業のIT支出は、大企業で「増加」が「減少」「変わらない」を上回った。

今回の調査では、2017年度の国内企業のIT支出計画は、全体では前年比で「変わらない」とする企業が60%以上を占めた。大企業では「増加」が「減少」だけでなく「変わらない」を上回り、業務拡大などを背景にIT投資が活発化していることが明らかになった。産業分野別では、金融をはじめ大企業の比率が高い産業分野を中心にIT支出の増加傾向が強くなっていた。

IT投資領域を詳しく見ると、2016年度実績では、相次ぐ情報セキュリティ事件を背景に、引き続き全ての従業員規模/産業分野でセキュリティに関する項目がトップとなった。一方で、2017年度に計画されているIT投資領域で用いられるテクノロジー/手法としてAI(人工知能)が前年度よりも大きく回答率を伸ばした。IDC Japanは、AIが今後取り組むべき新しいテクノロジーとして注目されていることを示していると説明する。

具体的なIT部門の取り組みとしては、社内ITインフラエンジニアや社内システム運用人材の強化を挙げる企業が増えているという。社内向けシステムの開発を行うITエンジニアの数を増やすという回答も従業員規模に比例して多く、セキュリティや営業系システムなどIT投資の多い領域を中心に開発されている。ビジネス環境の変化を背景に、コストの抑制だけでなく、競争力の獲得のためにシステムの改修や刷新を自社で迅速に行えるようにするため、大企業を中心に運用や開発の内製化を進める動きが強まっていると同社は見ている。

一方で、IT部門が関与しない、ユーザー部門独自のIT予算がある企業も従業員規模に比例して多かった。特に大企業や中堅企業を中心に、AIやIoT(Internet of Things)などへの投資が目立つという。製品やサービスが使いやすくなったことなどを背景に、大企業や中小企業のユーザー部門がIT部門の対応を待たず積極的に新しいテクノロジーを導入していることが分かった。

IT投資は大企業に牽引されて拡大を続けており、IT部門だけでなくユーザー部門独自のIT投資も活発化。社内ITインフラや社内システムの運用、開発を自社の人材で賄おうとする潮流も強まり、その対象はデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える新しいテクノロジーの活用にまで及んでいるとIDC Japanは説明する。