バス乗務員の健康を見える化

近ごろニュースでバスの事故映像を度々目撃する。乗務員が運転中にくも膜下出血を発症して、貸切バスが道路下に転落――。乗客の嘔吐物を清掃した乗合バスの運転手が、4時間後、乗務中に意識を失った。

少し古い国土交通省 中部運輸局の資料「乗務員の健康に起因する事故について」には、そんな具体例が挙げられている。疾病・体調不良等による事故の割合は、全国で8.7%を占めている。ゆえにバスのみならず、鉄道を含む公共交通機関の「運輸安全マネジメント」の強化、乗務員の健康管理が急務となっている。

事業所から離れた乗務員の健康と安全の確保、働き方の改善や職場環境の整備が進められているという。日本電気株式会社(NEC)は、小田急シティバス株式会社と連携し、乗合バスの安全運行支援に向けて、ウェアラブル端末による生体情報の収集・活用の実証実験を行った。

乗務員が装着したリストバンド型のウェアラブル端末を用いて、乗務中の生体情報を測定。測定したデータは、スマートフォンを介してクラウド上へ収集・蓄積し、乗務員ごとに疲労度の判定に使用することで、本人でも気づかない乗務中の体調変化や疲労の見える化を可能とした。基盤には、IoTシステムを実現する機能群である同社の「NEC the WISE IoT Platform」を用いていて、健康状態がリアルタイムに可視化される。

今後、同IoT基盤における判定の精度を高めるとともに、勤務予定・実績、その他の業務システムとの連携により、乗合バスや鉄道乗務員が運行中に高いパフォーマンスを発揮して運行品質や安全を高め、交通事業者の働き方改革に貢献すべく検討を進めていくという。

NECは、IoT技術を用いて小田急シティバスとの共創による実証実験の成果をもとに、バス、鉄道の安全運行環境づくりに力を尽くすとした。