IoTのプライバシー保護を実証

あらゆるモノがネットにつながるIoTは今、さまざま分野にその適用範囲を広げ始めている。

センサー類からの情報を大量に集積し、生産効率の向上や新製品の開発などに活かす。産業分野のIoTでは企業秘密の守りが重要テーマになる。一方、つながる車(コネクティッドカー)では、集積データの垣根を越えた活用が、その革新と普及の鍵を握っている。

家電製品や住宅設備、電気ガス水道メーターがネットにつながるスマートホームで、住人は、便利で快適な生活を希望しても、「○○さん、きょうは朝風呂に入った」みたいに、自己が特定され、自身の生活様式がネット上に流れることは望まない。コネクテッドカーでも同様だろう。IoTにより、走行状態に合せて保険料が安くなったり、故障やその予兆に迅速に対応したりのサービスは歓迎される。けれど皆、毎日どこに行っているかまでは誰にも把握されたくないはずだ。

自分の体重さえ他人に知られたくない人が多いのに、血圧計や体脂肪計のデータがサイバー空間を飛び交うかも知れない。医療・ヘルスケア分野でのIoTともなれば、プライバシーの保護は一層深刻な課題となる。

それら、今後広がりをみせるだろう適用分野において、株式会社KDDI総合研究所はプライバシー保護技術を強化する。

今年度から3年に及ぶ総務省の「IoTデバイス/プラットフォーム等の連携技術の確立と相互接続検証に向けた研究開発」を受託。複数事業者によるIoTデバイス/プラットフォーム等の連携技術を確立し、その成果を活用して実サービスを目指した相互接続検証の実施、確認を行い、さらに連携技術について国際標準化提案を目指す取り組みを発表した。

今回の事業は、情報流通のトレーサビリティ、情報の真正性保証、情報転送の低遅延化等の機能を、異なるプラットフォーム間においても実現する「PPM(Privacy Policy Manager)の高機能化」と「プラットフォーム間連携技術」を開発・実証・評価する。PPMの高機能化にあたっては、ビットコインなど仮想通貨の基盤に用いられているブロックチェーン技術の応用も視野に入れて検討するという。

その実証モデルとして、生体情報等センシティブ性の高い情報を取り扱う(1)健康ビジネス(フィットネス、メンタルヘルス、食事管理)、(2)健康保険(企業・協会)、(3)生命保険・損害保険、(4)スマートホーム、(5)コネクテッドカーの5つの事業分野を選定し、関係各方面の学識経験者、有識者、関係省庁等の助言を受けつつ開発する構えだ。