市販UVライトで『光る花』鑑賞

夏の夜、すみれに似たトレニアが幻想的に光る。 蛍光剤を塗ってもいないのに。それはおよそ4年前のことだった。

2017年6月27日

乾燥や暑さに強く、耐陰性があり初心者でも簡単に育てられる1年草のトレニア、"ハナウリクサ"とか"夏スミレ"とも呼ばれる。それに、富山湾深海に生息する海洋プランクトン・キリディウス属から発見された蛍光タンパク質を導入し、暗闇の中で黄緑色に「光る花」の開発に成功した。翌年、「光る花」を遺伝子組換えで作製。青色発光ダイオード(LED)で照らして、黄色のフィルター越しに見ると、強い蛍光を発した。成果は、ドライフラワーにさえ応用でき、花に光という新しい価値を与え、園芸植物に新分野を開くとして世界的に注目された。

その間、社名を刷新し組織を拡大しつつ、上記一連の産官学共同研究にも携わっていたNECソリューションイノベータ(株)はきょう、千葉大学環境健康フィールド科学センター(三位 正洋名誉教授の研究グループ)および奈良先端科学技術大学院大学とともに、新たに開発した黄緑色蛍光タンパク遺伝子を導入した観賞花"ペチュニア"の開発に成功したと発表。「光るペチュニア」は、目に見えない紫外光下で効率よく蛍光を発するため、従来必要だった可視光源および黄色フィルターなしに観賞できるという。

この有機化合物――観賞時に黄色フィルターを必要としない蛍光タンパク質を開発するために、遺伝子の配列を置き換え、目に見えない紫外光を最も良く吸収できる変異体を30万通りの候補から選別。さらに、蛍光の輝度を十分に高める改良を加えることで、紫外光の照射時に明るい蛍光を発する改良版蛍光タンパク質の開発を成し遂げた。同タンパク質遺伝子の導入によって、市販のハンディー型UVライトでも鮮やかな蛍光を確認し、手軽に鑑賞できる手段を実現したとのことだ。

NECソリューションイノベータは、これから、花き業界への蛍光タンパク遺伝子の提供を行い、同業界とともに共創活動を行っていく。

あらゆるモノがネットにつながるIoTと組み合わせるなど、観賞花を美しく光らせるためのライトデザイン設計も行っていて、たとえば本年4月より、東京藝術大学と共同で、光源となるライトデザイン設計を進めているという。

「光るペチュニア」は、来月11日(火)から10月1日(日)まで、国立科学博物館にて開催の特別展「深海2017~最新研究でせまる"生命"と"地球"~」にお目見えする予定だ。