産総研、地下構造を推定可能なデジタル重力図を公開

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)地質調査総合センター 地質情報研究部門は、20万分の1の「和歌山地域重力図」を完成し、平成29年3月にデジタルデータとして出版したことを発表した。

地質調査総合センターでは、全国の「重力図(ブーゲー異常)」40枚を順次作成中で、今回の和歌山地域は32枚目に当たる。場所によって異なる地表面の重力は、その測定によって断層の位置や地下の鉱物資源の有無などの「地下構造」を推定できる。防災・減災や資源探査などに役立てられている。

産総研はこれまでにも地表面にどのような岩石や地層が分布しているかを表した「地質図」も作成してきた。産総研によると、これら重力図と地質図を照合することで、日本における地表面から地下に至るまでの詳細な地質構造の高精度な特定、それによる日本列島の成り立ちの歴史の解明につながるという。しかし、全国を網羅した重力図は存在せず、重力値が細かく測定されている場所と全く測定されていない場所があるなど、地域や場所によって大きなムラがあったと説明する。

産総研では1990年から全国各地の重力値を網羅的に測定し、地域別に順次31枚の重力図を出版しており、今回新たに「和歌山地域重力図」が完成した。和歌山地域重力図で編集に用いた重力測定点は合計1万4828点(陸域は1万4170点、海域は658点)。陸域の1万4170点のうち、産総研が測定したのは3387点で、それ以外の測定点では他の機関や組織から相対重力値の測定結果を提供してもらい、まとめている。

情報提供機関は、名古屋大学、京都大学、帝石石油株式会社(現・国際石油開発帝石株式会社)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、東京大学、地学団体研究会、金沢大学、新エネルギー・産業技術総合開発機構、国土地理院、鳥取大学、米国防衛地図作成局 (現 米国全国画像地図作成局)、海上保安庁海洋情報部、静岡大学、秋田大学、中部大学、岡山理科大、千葉大学(測定点数順)など。

今回初めてデジタルデータによる出版となった。産総研のWebサイトにアクセスするとデータをダウンロードして利用できる。

ダウンロードサイトURLは、以下となる。
https://www.gsj.jp/Map/JP/geophysics.html

産総研では今後、南アルプスや中央アルプスなどの山岳地域を中心に、まだ重力値が測定されていない地域の相対重力値を測定して残りの重力図の完成を目指す。