皮膚の断層画像も中の血管網もよく見える

妊婦さんや人間ドックに行った人――だけでなく、おとなの勤め人なら誰でも健康診断でそれを見たり、それに触れられたりの経験があるだろう。

医療分野で広く使われているエコー(超音波イメージング)は、生体組織の硬さの違いを識別して、生体の構造を非侵襲で画像化できる。

しかし皮膚内の血管など、生体浅部にあり硬さの違いが少ないものは画像化が困難である。一方、新たなイメージング手法として世界中で研究開発が進む光超音波イメージングは、血管など光吸収特性を持つ特定物質を画像化できるものの、光を吸収しない皮膚表面の凹凸や皮膚内各層の境界、毛穴などは画像化できない。ために測定位置や内部構造などが分かりにくい、欠点があるという。
株式会社アドバンテストは、光超音波と超音波を組み合わせて、人の皮膚内部(真皮)にある血管網を、高分解能で3次元イメージングすることに成功した。

光の吸収特性のある物質にパルス光を照射すると、光を吸収した物質が断熱膨張し超音波が発生する。その超音波をセンシングし、吸収物質を正確な深さ情報とともに高コントラストで画像化する、光超音波イメージング技術において、同社は一昨年、皮膚表面から3mmまでの深さの血管網を非侵襲で画像化できる光超音波顕微鏡「Hadatomo™」を発売。血中ヘモグロビンの光吸収特性に合わせた波長の光源を使用することで、血管網の画像化を可能にしている。

そして今回、中心周波数50MHzの高周波プローブを使用して、人の前腕部での高解像度3Dイメージングに成功した。新技術では、同社が長年培った計測技術を応用し、光超音波信号の受信と超音波の送受信、および3Dイメージングのためのスキャン動作をタイムロスなく同期させ、高速での撮像を可能にした。これによって、皮膚の断層画像が見えるだけでなく、真皮のどの深さに血管があるかを精緻に特定できるようになった。

表皮の構造(キメ、毛穴など)を画像化することにも成功していて、医療や美容をはじめ幅広い分野での"in vivo測定"(生体を非侵襲で測定)の可能性を開いたという。